おまけページ その壱  

※日本公開版以外のバージョンだったり、本編以外のことを語る、おまけのページです。




『ドラゴンロード <大陸版>』 (1982)

かつて、ジャッキー映画に詳しいファンの間では
「ドラゴンロードには日本公開版とは構成の異なるバージョンがある」 という話が知られており、俗に「大陸版」と呼ばれていた。日本で発売されたVHSも日本版だったので、昔のファンは海外ビデオでも手に入れない限り、その幻の作品を目にする機会がなかった。
DVDでジャッキー映画が再販されるようになってから、
「デジタルリマスター版」 として発売されたジェネオンというメーカーのDVDが実はこの大陸版で、ファンの間では驚きと共に歓迎されたらしい。Kが再ブームに突入した頃はこれも製造終了になっていたので、偶然店頭で見かけるまでは、やっぱり日本版VHSのバージョンしか見られなかった。
その後、VHSがレンタル店から姿を消し、ここ数年でジャッキー映画のDVDが再販されたり放送されたりすることが多くなり、 『ドラゴンロード』 はほとんど「大陸版」が主流になった。今じゃ日本公開版を見ることの方が困難になっているのだから、時の流れというのは不思議なものだ。

ふたつのバージョンがどう違うのかというと、大雑把に言えば「大陸版」のラストにある「ゴールドポイントの試合」のエピソードが「日本公開版」では冒頭に来ている、ということだ。
多分、大陸版の方がジャッキー製作の本意に近いのだろうが、前半に大きなアクションもなく、ダラダラした展開になってしまうため、日本公開版ではゴールドポイントの白熱した試合模様を冒頭に持ってきて、一気に映画の中に観客を引き込むという狙いがあったと思われる。スポーツシーンなどは本編の流れに直接のつながりはないため、順番を入れ替えてもそれほど違和感はないのだ。
同様に、日本版では密売組織のいざこざの途中でも、ちょっとしたカンフーアクションも挿入されているが、大陸版には入っていない。一方で、ゴールドポイントやドラゴンキッカーの長い試合模様を日本版では一部カットして短くまとめ、日本の観客に飽きさせないようにしてある。全体的に、冗長なシーンが多い大陸版のあちこちをカットしてテンポをよくし、メリハリのあるバージョンになっているのが日本版といえるだろう。後半まで勢いがあって見られるし、敵の
ウォン・インシックとの闘いがラストバトルになっているので、一気に盛り上がってカンフー映画っぽく感じる。ラストエピソードも後撮りして本作専用に作っているので、お得な感じである。

日本版に比べ、大陸版は前半でボンクラ少年たちの日常をまったりと描いていて、ガウとの喧嘩や漢詩の暗唱のシーンなど、日本版よりも長い。後半になってアクションが尻上がりに増えてきて、ウォン・インシックとのカンフーバトルの後、最後の盛り上がりとしてゴールドポイントの試合が配置されている。試合に勝ったロンの胴上げで終劇となっていて、
命がけで闘うという人生の転機を乗り越えた青年の、確かな成長を描いたラストと言えるのだろう。ボールを追いかける集団の前に飛び出してきた子供たちを、ロンが抱えて助け出す場面なども、そんな成長の証と感じられるんだね。観賞後に爽やかな気分になれて、Kはこの大陸版もけっこう好きだ。
大陸版で特に語っておきたいのが、ドラゴンキッカーの試合。これ、実はスポ根マンガ顔負けの、とてもドラマチックな試合展開になっているのだ。
まずドラゴンチームは、敵の
フォン・ハック・オン率いるチームに3点を先取される。この失点も自殺点だったり、ゴールキーパー・ガウがフェイント使いのフォンに翻弄されたりと、起伏があってちゃんと終盤への伏線になっている。ロンたちも懸命に反撃するのだが、敵のラフプレーやシャトルが壊れるなどの不運が重なり、なかなか得点につながらない。ようやく同点まで追いついたものの、試合終了直前にゴールを決められ、ガックリと肩を落としてしまう。
ところが、審判の判定はノーゴール。ロンたちは飛び上がって喜び、風がこちらに吹いてきたことを感じる。
(このエピソードは日本版ではカット)
そして迎えた延長戦。フォンたちの荒っぽい体当たりなどを食らいながらも激しい攻防の末、ドラゴンチームのペナルティで再び、ガウとフォンの一騎打ちとなった。息を切らせて疲れ果て、負けを覚悟して座り込むロンたち。
しかしここで、ガウがフォンに一矢報いてシュートを弾いて見せた。飛んできたシャトルを振り向きざまにシュートするロン、ゴールに吸い込まれる起死回生の一点。これでドラゴンチームの優勝が決まったのだ。
まるで
「キャプテン翼」でも見ているような劇的な展開とドラマ性、しっかりしたキャラ設定や起承転結のある試合構成など、よく見るとホントに面白い。スポ根漫画の定番をキッチリおさえてあるのだ。この名勝負を十分程度で終わらせちゃってんだから、実にもったいなさすぎる…w
試合の間にもっとチーム同士の会話や互いの表情やナレーションや、敵チームとの因縁や、ハーフタイム中の描写などがあれば、これだけで
『チャンピオン鷹 のような一本になったんじゃないかと、スポ根マンガ好きのKは考えてしまう。当時のジャッキーたちにもっとドラマ性の表現力があればなぁ…と、いまさら残念に思ってしまうのである。

話がそれるが、ドラゴンキッカーの試合で周囲に並べられている看板を見ていたり、その他のいろんな場面で、この時代の中国の人の生活様式や習慣がどんなものだったんだろう? という興味も湧いてくる。キジ狩りの時にロンたちが履いている皮ズボンのようなものとか、ロンたちが追いかけていく女の子たちが集団で暮らしているらしい生活様式とか、多分、きちんとした時代考証の元での設定があるのだろう。中国文化に詳しくないのでよくわからないが。
ガウは首に鈴つきのお守りのような飾りをぶら下げてずーっと
チリンチリン鳴らしているし、ロンは赤い紐にヒスイらしいペンダントをしていて、これもお守りのようだ。太保たちもロンと同じペンダントをしているが、ロンの屋敷の使用人だから同じものを首にかける習慣なのかな…?
(ちなみに、ウォン・インシックと闘うと決意した場面で、ロンがこのペンダントを外して倒れたままのガウに預けるというシーンがすごく好き。何故か日本版ではこの短いシーンだけがカットされていた)
そういえば、ウォン・インシックとの闘いでは、ガウ(
マース)は頑張ってたよなぁ。特に二階から投げ落とされるシーンはなんのクッションもなくて、見るたびに痛そうでハラハラする。ジャッキーも突き落とされていたけど、梁にぶつかって反転しながらガウの上に落ちる時、背中から落下するよう、ごく自然に身体の向きを変えている反射神経とか、凄いなぁと思ったり。
本作でも 『ヤングマスター』 でも、インシックとの闘いはジャッキーが若さだけで挑んでいる印象がある。何度胸を蹴り飛ばされても立ち上がり、あれでよく肋骨が折れないなぁと毎回思う
(ヒビくらい入ってそうだけど;)。攻撃しているインシックの方が息切れして、そのしつこさに根負けしてしまった。若さと体力だけで勝利しちゃってる感が、これまでの拳シリーズや、その後の現代劇の中のカンフーバトルと違っていて、なかなか面白くて好きなのである。

つらつらと気になることを書き出してみたが、もっと呟きたいことはたくさんある。 『ドラゴンロード』 っていろんな要素がギュッと詰め込まれていて、そんな風にいつまででも語っちゃいたくなるような濃縮な味が魅力なんじゃないかな、とひそかに思っているのでした。


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