Mini Theater
   
〜ミッドナイト・ミニ劇場2〜

Interview

 

コホン。えー、○○年、十一月十日。カフェ『リバーサイド』にて。録音を開始します。

お待たせいたしました。
世界のビジネスマンの愛読雑誌『ワールドタイム24』、
ビジネス界で成功しつづける若きカリスマ指導者に、成功の秘訣をお聞きするスペシャル企画のインタビューです。本日のゲストはアルセーヌ・ルパン三世をお招きしました。


ミスター・ルパン、ようこそお越しいただきました。
今日のお話のテーマは「勝ち組になるためのリーダーシップ」です、よろしくお願いします。
数年前に設立した小さな会社で、現在巨額の富を生み出しているミスターの会社『ルパン・ザ・カンパニー』、従業員はわずか三人で、なんと年収五億とも十億ドルとも言われています。
ミスター、ズバリ伺います。成功の秘訣はなんですか?


――あくなきチャレンジ精神と不屈の闘争心、ですか、なるほど。

もう少し具体的にうかがいます。
たとえば、かの高名なるエジソンは、「天才とは一パーセントのひらめきと九十九パーセントの努力」という名言を残されました。現代の天才的カリスマであるミスターは、この格言をどのようにお考えですか?

は? 
……はぁ、エジソンは確かに実業家としては失敗した人物ではありますね。
つまりカリスマではなかったと……これは失礼しました。

ええ、エジソンが事業を成功できなかったわけは、彼が昔に雇っていた技術者が原因でしたね。
その男との約束を守らなかったことで、男はエジソンのライバル会社を作り、エジソンを徹底的に攻撃しました。そのせいで、エジソンの素晴らしい発明は事業として巨万の富を生み出せず、借金だけが残ったという、悲劇的な結末に至ったわけです。
要するに、昔の飼い犬に手を噛まれたという格好だったわけですが、その、もと社員だった男もかなり優秀で、しかも恨みは忘れない性格だったということでしょう。
ところでミスターの方は、エジソンの失敗を踏襲しないために、何か心がけていることはありますか?
噂ですが、従業員の女性秘書に、何度も会社のお金を持ち逃げされているそうじゃないですか。


いやいや、もちろん噂ですけどね。
何でもその女性、絶世の美女で、しかも派遣社員。ミスターの会社だけに勤めるのではなく、他の大手企業の会長たちからも度々お呼びがかかるほど有能な方だそうですね。
そうそう、資産家の方々とよくバカンスに出かけられているそうじゃないですか。
ミスターがご趣味で集められている骨董品や美術品も、その女性秘書に根こそぎ奪われていると聞いていますよ。


え? そうですか、税金対策で。
なるほど、確かに集めた骨董品は会社の資産として算出されますからねぇ、でも贈与にしても贈与税など、なかなか大変なんじゃないですか?
実は、これも聞いた話ですが、先日南インド洋に沈んだ船を引き上げて、数トンにもなる金塊を手に入れられたそうですね。大変危険なサルベージで、中国の貿易商ともかなり険悪な競合をなさった結果、ようやく利権を得たそうですが、ミスターの会社の方々もずいぶん苦労されたと聞いています。
その金塊をその女性にまた持ち逃げされたという話も聞いていますが。


……ああ、いやいやいや、まぁそう興奮しないで下さい、
いや、違いますって! 私はしがない雑誌インタビュアーですから!
噂です、噂。私が言いふらしてるんじゃありませんよ?

ええと、どこまでお話ししましたっけ?
ああ、そう、その秘書の方に多くの美術品を譲渡なさっているということでしたね。
ルパン・コレクションとして美術館を建てるなどの話も耳にしますが、つまり今はそんなご予定もないということですね……

失礼。話を元に戻しましょう。
私がうかがいたいのは、従業員三人で働いている会社でですね、会社の利益の半分ほどが特定の方の手元に行ってしまうことについて、残りの従業員の反応はどうかということです。
ああ、やはり不満の声は上がっているということですか。
もちろん、ここだけの話にしておきますよ。毎回毎回、なだめるのに大変だと……ええ、ご苦労お察しします。

残り二人の社員の方々も、その専門分野では相当名のある有能な人材だと聞いています。
そう、確かミスター・次元と、ミスター・石川、ですね。彼の人たちも、本来、自分で事業を起こしてミスターのライバル会社を作っても、充分成功できると評されている方々です。おそらく、『ルパン・ザ・カンパニー』を脅かすほどの実力はあるだろうと。
それほど能力のある方たちを長年、配下において、ミスターが会社の利益を秘書につぎこんでも造反させず、部下としてうまく扱ってこられることができた秘訣を、ぜひお聞かせ願えますか。


おや、彼らが部下ではないとおっしゃる。
“相棒”“仲間”……共同経営者なのですか?
……ふぅん、そこらへんが秘密なのですかね。
え? つまり、部下という言葉を使わず、ミスターと同等の各付けであるという立場においておくことが、ミスターの部下掌握術なのかと思いましたので。
そうじゃない? じゃあ、契約社員てことですか? ああ、フリーランスなのですか。
ええ、そこのところをもう少し詳しく聞かせてもらえますか?


あれ、何か入り口の方が騒がしいですね。なんでしょう……
な、なんですか君たちは? 今はインタビュー中……ちょっ、待ってください、
わぁ! なんですか銃なんか出して! すいません、私は雑誌記者です、政治思想は持ってません!
勘弁してください、違いますったら…ミスターとは初対面です、インタビューなんですって…

あ・貴方が『ルパン・ザ・カンパニー』の……ああ、次元、さんですか。
するとそちらの方が、石川五右衛門さん。はぁ、個性的な衣装でいらっしゃいますね。
いえ、とんでもない、お噂はかねがね聞いております。
え? サルベージの金塊ですか? ええ、峰不二子という秘書の方の手に渡ったと、実は確かな筋の情報でそう言われていますよ。
なんですって? 聞いてない? またタダ働き? ……はぁ、すると二ヶ月に及ぶ沈没船引上げ作業の苦労は水の泡ってことですか…ご無念お察しします…


わっ、いけません、こんな公共の場で銃なんて振り回しちゃ! そんなあなた、ルパンさんは一応社長じゃ…… 上司に向かってそんな、わーーっ!!
あ、ミスター! 逃げないで、まだインタビューは終わってませんから!
ちょっと貴方がた、店が壊れますって、テーブルが二つに割れちゃってますって、ストップストップッ!!


………

……

……申し訳ございません、お見苦しいところをお見せしました。
ええと、どうやらミスターは金塊を美人秘書にそっくり持ち逃げされたことがバレて、カンパニーの方々から粛清を受けた模様です。先ほど逃亡して行きました。
どうやらインタビューの続行は無理なようなので、ここで録音を終了します。
……しかし、ミスターってカリスマと言う噂だったんだけどなぁ… 
物騒な方々と組んで仕事をしてらっしゃる… 部下、じゃないよなアレ…

ああ、ウエイトレスさん、勘定お願いします。『ワールドタイム24』で領収書お願いします。コーヒー二杯の代金ね。
ええっ? 知りませんよお店の修繕費なんて。私はここでインタビューしていただけなんですから。

いや、私だって被害者ですよ?


……だから、私は単なるビジネス雑誌のインタビュアーなんですって……

 

                    <完>

 


なんとなく、一人称の小説が書きたくなったのですが、
ルパンキャラを「俺」「私」で語らせるのは絶対無理なので…
イレギュラー的一人称小説を書いてみました。
ただ、それだけ(笑)。他に意味なし。

ルパンカンパニーというものを作ると、社長のルパンが愛人不二子ちゃんと
いちゃつきまくって、会社の金とかつぎ込みそうだなぁと。
で、次元・五右衛門が労働者の権利を主張して「働いた分の給料払え〜!」と
ストライキを起こしたりして(笑)。

いや、そうしてみるとずいぶん不平等な会社だよ、ルパンカンパニー…

 

モドル