ワイヤーワーク編 ![]()
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ジャッキー映画とワイヤーアクションは、切っても切れない関係だ。カンフー映画時代から現在に至るまで、アクションシーンを効果的に演出するため、または危険なスタントの際には命綱のため、古くはピアノ線、現在はワイヤーと名を変えたそれは、陰ながらジャッキー映画を支えてきた必須アイテムのひとつである。
しかし、そういうスタントとは少し別の形のワイヤーワークが、数年前から映画界を席巻し始めた。詳しくは知らないが、『グリーンディスティニー』や『マトリックス』辺りがアメリカでヒットした頃から、ワイヤーで空を飛ぶタイプのアクションが流行りだしたらしい。見れば誰でもわかるだろうとは思うが、アクションを派手に見せる演出手段とは別に、明らかに人間には出来ない動きをするためのワイヤーワーク(+CG合成)。今のところ明確な分類や呼び名はないようだが、脇役に徹してきたワイヤーがメイン素材の主役として脚光を浴びるようになった。今じゃリュック・ベッソンもタランティーノもこういう撮影を取り入れているし、チャーリーズエンジェルだってワイヤーでくるりと簡単に宙返りをして、華麗な動きを見せてくれているのだった。
(※注意※ Kは映画のこういう手法についての知識はほぼゼロなので、誤った認識による話が混じる可能性があります。ご注意ください)
このワイヤーワークをハリウッドに持ち込んだのは、ユエン・ウーピンを代表とする香港映画界の出身者たちだ。香港では昔っからワイヤーで吊って空を飛んでいたのだから、元々は香港映画のお家芸ともいえる。そのトンデモな世界観がハリウッドで認められ、歓迎されたことを受けてか、ジャッキーも空飛ぶワイヤーアクション映画を作ることにしたらしい。
今までだってワイヤーアクションを使いまくっていたのだから、いまさらワイヤーで宙返りしたところでたいした違いはないだろう、なんて甘く見てはイケナイ。同じワイヤーワークでもこれまでとは全然違うのだ。そりゃもう、最高級鹿児島黒毛和牛の牛丼と吉○家の牛丼を食べ比べたときくらいに違うんだ。(…多分。)
その違いは見て理解してもらうしかないが、とりもなおさず、他のハリウッド映画と一緒に扱うにはあまりにも違和感がありすぎたので、抽出して別の分類とさせてもらうことにした。ここにどれくらい集まるのか、未見の近年作に戦々恐々としつつ。
まずは驚天動地のワイヤーワーク映画を語っちゃいましょう。
『タキシード』 (2002)
【あらすじ】N.Y.でタクシー運転手をしているジミー・トン(ジャッキー)はある日、おかかえ運転手にスカウトされる。雇い主はクラーク・デヴリンというちょっと風変わりな紳士だ。意気投合する二人だが、デヴリンが突然、何者かに襲われて大怪我をしてしまった。ジミーは何故かデヴリンの身代わりとして「ウォルター・ストライダー」という人物を探すことになる……。
……えーっと。
途中まで書いていて、話の筋が全然わかっていなかったことに気が付いた
吹き替えで見たのに、三回以上見直したのに、なんかわかりにくいなと思っていたら、どうやら本当にあらすじから理解できていなかったらしいです。バカヤロ、調べて出直して来い。
……
………調べてみた。
えー、つまり、デヴリンはCSAという秘密組織のエージェントで、スーパータキシードを持っている。このタキシードを着ると凡人でもなんでもできてしまう、スーパーマンとかスパイダーマンに変身するスーツのようなものだ。これを着て超人になったジャッキーは、新米エージェントのデル・ブレインと共に任務に就き、悪を倒すついでに「ウォルター・ストライダー」を探す…というお話。
でも、なんで単なる運転手のジャッキーが「ウォルター・ストライダー」を探さなければいけないのか、何故、彼が突然エージェントとして動き始めてしまうのかがやっぱりよくわからない。多分、この時点でKは物語の流れからオチこぼれてしまったようだ。
ジャッキー映画の再ブームに突入した当初、「そういえば前にテレビ放映して、録画したけど見てなかったジャッキー映画があった」と思い出して見た一本。録画したまま見るのを忘れてるって映画、結構あるよね;
で、見てみて驚いた。
「いつの間にジャッキー、こんなつまらない映画を撮るようになったんだ…」
テレビ放送されればたいていのジャッキー映画は見ているが、ストーリーはともかく、アクションシーンで魅了されなかったことなど、未だかつてない。どれを見てもどこかが面白いと思うポイントがあったから、今まで漠然とでも見続けてきたわけだけど、こんなに面白くないジャッキー映画を初めて見た気がした。
気のせいかな? と思ってもう一度見直してみたけど、やはり面白くない。ジャッキーらしいアクションが見られないし、何より、ストーリーが屑。TV用の短縮バージョンだからというだけでなく、とにかく説明も脈絡もなくて、意味不明。ジャッキー映画で物語性を求めていないけど、どうしても物語の展開についていけない。普段なら多少の不審点があっても、アクションシーンなどに引っぱられて話についていってしまうものだが、この話はどうもダメだ。ジャッキーはじめ、登場人物たちはどれもこれもおつむが弱そうで知的じゃないし、全体のテンポというか、変なノリにドン引きした気分を最後まで立ち直らせることが出来なかった…
その後、ジャッキー映画を何本か見ると、どれもとても面白かった。ファン間では評価の低い映画を見ても、Kにとっては充分楽しめたので、もしかしてこの映画ももう一度見れば面白いかもしれないと思って再見してみた。そしたらやっぱり面白くなかった。
ダメだこりゃ。
この映画のウリのひとつがジャッキーのワイヤーアクションだったことは後になって知ったが、最初に見た時はマジにびっくりした。別にワイヤーアクション自体はキライではない。『マトリックス』だって『英雄』だって『少林サッカー』だって見るから、その手法自体は見慣れたものではあるのだが、ジャッキーがワイヤーアクションで空を飛ぶ日が来るとは夢にも思っていなかった。ちょっと愕然としてしまいましたよ。
謳い文句としてはスピルバーグ率いるドリームワークスが「君にしかできない」とジャッキーに熱烈ラブコールをして実現した夢の企画、らしいが、僭越ながら、見た感想としては、「ワイヤーで吊るならジャッキーじゃなくたっていいんじゃないかなぁ…」というところだ。多分、多くの人がそう思ったと思うけど。
そりゃ、ジェット・リーだって飛んでるし、ジャッキーが空飛んだって別にかまやしないけどな? どうせ飛ぶなら、もっと全然違う形で「ジャッキーチェンにしかできない」ワイヤーアクションを見せて欲しかったよ。バク転したり踊ったり、敵と戦ったりするアクションの中でワイヤーなんて、他の誰にだってできそうじゃないか。もっと新鮮で奇抜なワイヤーの使い方ってなかったんかいな……
正しくは「この程度のアクションでワイヤーを使うなら、ジャッキーである必要はない」だ。
あのジャッキーがワイヤーアクションをするなら、常人がワイヤーで吊るすよりもっとすごいことができるはずなんじゃないのかと、そう思ったりするんだけど。
まぁ、スーパータキシードって妙な代物を身につけると超人になる、という設定まではヨシとしよう。アメリカ人は変身モノが好きだからな!(爆) でもせっかく『マスク』的に超人になったのなら、飛んでるヘリコプターからステルスに飛び移るとか、走ってる地下鉄を力任せに片手で止めちゃうとか、そんくらいやってもよかったんちゃう?
イヤ…発想が貧困だから変な例しか思い浮かばないんだけど……別にスケールがでかけりゃいいってモンじゃないし、実際はそんな「ド派手に壊せばいい」っていう頭の悪い映画にも充分食傷気味だけど、いくらなんでも、「水」で大儲けしようとしている悪党の屋敷に忍び込んで、地下の研究室を見つけて、アメンボの争奪戦をする、って程度の話に、ジャッキー+ワイヤーアクションを合わせなくてもいいんじゃなかろうか。
巨大なものを破壊する、むやみにスケールの大きなアメリカ的アクションじゃなく、ワイヤーとジャッキーアクションを競演させることによる、我々が思いもつかなかったような斬新なアイディアが、ジャッキーならいくらでも思いつきそうなんだけどなぁ。
せめて「地下水を汲み上げすぎて自由の女神が傾いちゃったので、ジャッキーが一生懸命引っぱって元に戻す」くらいのテイストは欲しいところだったなぁ、と思うものである。
そういうわけで、どう好意的に考えてもジャッキーという素材を生かしきれなかった『タキシード』だが、このあたりの採点について、この作品だけで結論を出すの早計というものだ。何しろジャッキーのワイヤーアクションは続くのだ。次なるワイヤー版ジャッキー映画へと、話は続いていくのである……。
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『メダリオン』 (2003)
香港の刑事、エディ・ヤン(=ジャッキー)は国際犯罪組織のボス、「蛇頭」の捜査をしていて、一人の少年が誘拐されたことを知る。マフィアの本拠地であるアイルランド・ダブリンのインターポール支部に協力を求めたエディは、そこで香港で一緒に仕事をした変わり者の捜査官・ワトソンと、昔の恋人ニコルに再会。二人と協力して少年の救出に乗り出すが、貨物船のコンテナに閉じ込められ、海に突き落とされて命を落とす。ところがその後、少年の持つメダリオンの力で不死身の超能力を持った者として甦った。メダリオンにより、同じように驚異の超能力を手にした「蛇頭」と対決する、という物語。
香港・アメリカの共同制作。詳しい経緯は知らないが、アメリカの会社に出資してもらい、香港スタッフで製作したらしい…ジャッキーはちょっとした義理から製作に携わることになったようで、いろいろな他映画の制作の合間に撮影したため、完成まで一年以上かかったという話だ。原題(ハイバインダーズ)の時は公開版とは大分内容が違っていて、アメリカ会社側の意向でかなりの変更を余儀なくされたものらしい。そんなわけで、当初掲げた看板からなし崩し的に縮小されたものをなんとか完成させた、といった小粒な印象の一作。本編が90分未満と短く、物語もわりと軽いテイストに仕上げたという点で、最終的な戦略はまずくはないといえるだろう。日本公開時はジャッキー生誕50周年、日本公開作品50作目という節目な作品でもあった。
見た感想としては、普通の映画としてはまぁまぁ面白かった。話が唐突で説明不足ではあるが、少なくとも『タキシード』よりよっぽどわかりやすいし、楽しめる。ジャッキーの髪型も年齢に合っていて、顔も疲れてないし、衣装もおしゃれ。まったく、ここ最近のジャッキーの衣装はいいね! 最初のシーンでは黒い革ジャン姿。その後、ダブリンに来た後のカラーシャツとジャケットの色合いの組み合わせとか、無難に収めることなくてパッと目を引くんだけど、とても似合っていてカッコイイ。白いスーツ姿もいいし、生き返ってから着てた医療着みたいなのもそんなに悪くない。未公開フィルムを見ると、本当はホームズ帽もかぶるつもりだったらしい…(笑)。
その他、個人的な好みでいうと、脇キャラがいろいろと楽しめる。今回の相棒役のワトソンは、本来はイギリスの喜劇役者とかで、キテレツなキャラクターだった。最初はコメディ担当だとわからず、一人で嫌味な騒ぎ方をしていて「何だこいつ?」って感じだったんだけど、ジャッキーが生き返った時とか、ナイフで不死身ジャッキーを刺してみたりする時のやりとりが結構笑えた。この「ジャッキーよみがえり」辺りのシーンなどは、字幕で見るより日本語吹き替え版にして見た方が面白みがある。石丸さんの演技も、ワトソン側の声優さんのひっくり返った声も、パニクったやりとりがすげーいい。「ジャッキーが死ぬ」というのはひとつの禁忌だが、この映画では最初から生き返るとわかっているので、安心して見ていられるね。
ワトソンはこの他にもいろいろ喜劇なエピソードも撮影したようなのに、多くがカットされてしまってちょっと気の毒だ。まぁ未公開シーンで見た限りでは、全体のバランスから言ってカットされたのは無理もないと思ったけど。
ついでにメダリオンを持つ少年がすっごくカワイイ。ほとんど喋らないでニコッと笑う笑顔が愛らしいんですよ。その少年を守るジャッキーの、抱き上げたり笑いかけたりするちょっとした交流がK的にはおいしかったですv 思わずショタの血がウズウズと騒ぎ出す〜;
ジャッキーと子供って、大体がジャッキーが子供を守る、みたいな関係になりがちだけど、たまには「インディ・ジョーンズ」のキー・ホイ・クァンみたいな名子役を探してきて一緒に冒険活劇してくれないかなぁ、なんて思ってしまった。ああ〜、そう言えばキー・ホイ・クァンって今頃どうしてるんだ〜!?
(…そして『グーニーズ』とか中古ビデオで思わず買ってしまった。そんなことを言っていると『ラッシュアワー3』でインディ・ジョーンズの映画のシーンがあってキー・ホイ・クァンを見たよ。ショーティ! 奇遇だなぁ/笑)
アクションについては、もう笑えるくらいのブッ飛びワイヤーVFX的アクションで、こういうものだと思って見ればそれなりに面白いんだ(B級だけどね)。テンポもよくてBGMもどこかでよく聞くロックな洋楽だし(疎いのでよくわからん)、コミカルさを混ぜ合わせながら画面をド派手に飾ってくれている。ヒロインのニコルのアクションもなかなか頑張ってたしね。…ああ、いや、ニコルよりワトソンの奥さんの方が、端役だけどすごかった。清楚な奥様かと思ってたら、悪党の来襲に掃除用具入れから盾とショットガンを取り出していきなり戦い始めるのだ。あ、あなた何者!? すごいインパクトで、彼女の素性とさらなる活躍をぜひ見たかったです(笑)。
…脱線しました。要するにこの「メダリオン」、映画としては90分間、退屈しない程度には楽しめるものだったと、そのくらいには評価できます。登場人物がそれぞれ個性的で面白かったし、いろんなコネタが興味深かったので、見所を拾っていけばそれほど捨てたものではないぞ、と。
ただし、ジャッキーが出演してなかったら見るほどの価値はないだろうと思うし、それでは我らがジャッキーチェン映画として見た時に素晴らしかったのかというと、決してそうは思わない。大体、後半のジャッキー自身のアクションはほとんどないも同然、CG加工で飛び回ってるだけで、ラスボスとの決闘も空中でくるくる回るだけで終わってしまった。カンフーらしいものもなく、光と音と特撮に騙されてラスボスが倒されたとしか言いようがない。そこらへんは『タキシード』とよく似ている。
…ジャッキーにアクションをやる気がなかったとしか思えないんだが、どうだろう。
せっかくスーパーマンになったのにね。忙しくてアクションするのめんどくせーから特撮技術で加工するならまぁいいやって感じ?(どんなに気の進まない出演であろうと、ジャッキーがそんな姿勢で映画製作をするとは思っていないが) これ、サモ・ハンがアクション担当監督なんでしょ? どこらへんで振り付けしたのさサモ・ハン。
…うーん、ここまであからさまにやらなくても、もう少し自然に特撮できないものだろうか…
いやまぁ、不自然に飛び回るのがこのワイヤーワークの面白さではあるのだが。
実際、特撮技術の完成度などはよくわからないけど、いくつかのシーンではわりと面白い動きもあるんだ。そういう「遊び」をもっと見たい!って一瞬だけ思うような。そうですねー、例えばソファを飛び越えるというなんでもない場面だとか、病院で天井にぶら下がっている鉄パイプにしがみついてそのままバキバキっと折って吹っ飛んでいくシーンとか。ちょっと面白いと思ったかな。その前後の場面はともかくね。
ポールによじ登ったり、高い鉄門をヒョヒョイと乗り越えちゃったり、今までのジャッキーが生身でできていたことをわざわざワイヤーにする必要はないと思うんだけど、まぁ多少しんどいならその力をお借りするのもいいでしょう。ただ、そんなことじゃなく、それに加えた新たな映像美が見られそうな片鱗は感じられないこともないんだけどなー。もう少し使い方を工夫すれば、面白くなるんじゃないの?って、素人としては単純にもどかしく思ってしまうのです。
実際、『HERO』などのワイヤーアクションは映像美として素晴らしかったと思うし、こういうVFX自体は多くの可能性を秘めていると感じている。だからこそ、ジャッキーのこれが「もう少し進化したなら!」という期待がないでもない。
『タキシード』よりはまだカンフーアクションの見せ場があるし、テンポもいいし、物語も少し向上している。一方で過激な特撮の演出になっているが、やり過ぎてるところに面白さはある気がする。うまく化ければ、新たな新境地が開けてきそうな予感はあるんだけど…
さて、どうなるのか。今後のこの分野の作品(出ていれば)にもう少し、期待をかけてみよう。
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『THE MYTH 神話』 (2005)
【あらすじ】 香港で暮らす考古学者ジャック(ジャッキー)は、最近妙な夢を見るようになった。夢の中で彼は紀元前300年、秦の時代の武将・モンイー将軍になっている。不思議に思っていたジャックの元に、友人で物理学者のウィリアム(レオン・カーフェイ)が訪ねてきて、反重力の研究に協力してほしいと頼んだ。ジャックが以前に調査した、インド聖地の宙に浮く石棺に研究の鍵があるというのである。
ウィリアムと当地を訪れたジャックは、石棺の副葬品である女性の絵が、自分の夢に出てくる朝鮮国の王女とそっくりであることに気付く。蘇る断片的な記憶は真実の過去なのか? 秦の始皇帝の伝説を追いながら、ジャックは夢と現実の狭間に迷い込んでいく……
2005年、中国の啓蒙映画というか、 『英雄』 とか 『PROMISE』 とか歴史に基づいた大作映画が大挙して製作されていた時期に、ジャッキーが珍しく流れに乗って作ったような映画。Kはこれ、かなり最近(2010年1月)になってやっと見ました。それまではできるだけ評価や作品情報を仕入れず、ジャッキーが武侠映画にタイムスリップするような話かなと、ぼんやり考えていたのだが、うーん……予想以上のトンデモ話でしたな;
正直、本作はイロモノに入れるか、ワイヤーワーク編に入れるべきか迷ったのだが、よく考えればココ(ワイヤー映画編)の作品はどれもイロモノである。最終的に無重力状態で空を飛ぶという、ワイヤーワークを究極まで突き詰めているという点で、この分類の締めくくりにしておくことにした。
とはいえ、ジャッキー流のワイヤーワークはこの映画製作の数年で格段に進歩しているらしく、アクションが全体的にとてもスムーズになった。得意のカンフーも近年は加齢により、どうしても昔に比べると身体が重そうに見えていた部分があるのだが、 『香港国際警察/NEW POLICE STORY』 辺りからフワッと軽くなったというのか、全体的なアクションが軽快なテンポで動けている印象を受ける。さすがはジャッキー、自分流の新しいワイヤー使用法を編み出したらしい。この 『神話』 でも、特に前半の冒険活劇調のアクションなんかは素晴らしい出来だ。ただ、メインとなる無重力の中でのラストアクションが 『タキシード』 とか 『メダリオン』 的なトンデモワールドってことで…(苦笑)
ともかく、ジャッキー初の武侠歴史映画ということで、重厚な武将の演技やしっとりとしたラブロマンスもあり、その世界にハマれた人にはなかなか評判がいいようだ。ただコレ、どうせなら全編まるごと武侠映画にして欲しかった。120分と長尺で、現代劇と秦時代のシーンが交互に入るが、どちらも展開や状況説明が中途半端に終わっている。結果、両方の世界観それぞれに謎が残ってしまって、消化不良なストレスも二重に重なった気がするのだw 別々の作品として2本に分ければ、もう少し設定や人間関係をきちんと説明できる時間も取れただろう。その方が絶対に面白かったのにな…
まずはジャックが主人公の現代世界。これは特に前半が面白くできていて、「なぜアジアの鷹シリーズにしなかったんだろう…」と、何度も思ってしまった。伝説の剣を持って逃走とか、何気に足手まといなウィリアム(レオン・カーフェイ)との掛け合いとか、インディ・ジョーンズちっくで 『サンダーアーム』 を思い起こさせるテイストですごく好きだ。ウィリアムが石棺から手を出すたびにジャックに踏まれる場面とか、ジャッキーの動きも軽やかで、懐かしさすら感じてしまう。ジャッキーがもうちょい長髪でバンダナでも巻いてくれれば、「アジアの鷹3」になりそうなんだけどな。
しかし、考古学者が「墓泥棒はダメ」と言っているのもどうなのかと。発掘調査って基本的には全て「墓荒らし」で、発掘自体、政府に無断でやってはいけません。そしてインド政府に発掘許可を取る場合、持ち出し検査は当然発生する可能性があり、国外持ち出しが不可なら研究チームがインドに出張するべきだろう…
反重力の研究にきたウィリアムが、いきなり黒い石を「珍しいから」とほじくり出したり、研究に関連があるかもしれないと剣や美女絵を持ち出してしまう行動も不自然だ。理数系の学者の発想とは思えない。というか…物理学者の彼と考古学者のジャックの双方の恩師?らしい古(クー)教授って、何の専門家なんだろうか。反重力の研究をバックアップしていたかと思うと、ジャックの後をつけ、秦の始皇帝の地底宮殿を発見して喜んでいる。やっぱり考古学者なのかと思っていたら、最終目的が「不老不死の薬を手に入れること」らしいし…ううむ、この人は一体何がしたかったんだろうな??
要するに、登場人物の行動の動機が不明瞭なのだ。ジャックとクー教授の「過去の確執」の詳細もよくわからなかったし、最初にジャックが「発掘はもうやっていない」とワケアリに振り返った昔の写真の意味も説明されていなかった。設定は一応あったけど、エピソードを撮影できず、過去劇との辻褄を合わせていたらいつの間にか最初と全然変わっちゃった、という香港映画らしい紆余曲折っぷりかな( ^ ^;) 現代劇だけでちゃんと冒険映画に仕上げていたら、すべてとは言わないまでも、もう少し辻褄の合った人間像やあらすじになったんじゃないかと思われる。
ちなみにこちら側でのヒロイン、サマンサを演じてるマリカ・シェラワットはインドで大人気の女優さんらしいが、絶世の美女ですな! アクションも頑張っているし、エキゾチックな雰囲気の美人でとてもよかったと思うが、出番が少ないのが残念。あっち側の世界のヒロイン、キム・ヒソンばかりクローズアップされていて、もったいなかったなぁ…あ、キム・ヒソンも典型的な韓国美人ですね。絵に描いたように整ってる。今回の女性キャストはどちらもすばらしい女優さんで、その点では非常に満足です♪
そういえば本作は、動物の活躍もけっこう目立っている。川に落ちたジャックを助け上げた象のラクチュミの演技技術の高さには驚いたし、モンイー将軍の愛馬・黒風(ヘイフォン)の必殺の蹴り技には笑った。火の玉を蹴り返したり、敵をバックキックしてたり、笑わせるシーンじゃないはずだけど、格闘技ゲームを見ているようで吹き出したぞ…;
いや、黒風が怪我を負っても頑張って走り続けたシーンは感動したけど、その後モンイーが独り奮闘する場面で、彼に倒された敵軍の馬たちももんどりうって転がったり前転したりと、すごい迫力だった。今なら多少はCGも入っているのだろうが、昔、邦画 『激突』 って時代劇を見て、騎馬戦での馬たちの転び方があまりに凄まじく、「足を折った馬がいなかったんだろうか…」と心配でたまらなくなったことを思い出してしまった。(きっとJACには馬スタント調教の第一人者がいるに違いない、と信じることにして…)
ついでにCGと言えば、ジャックがコブラと格闘しているのはニセモノかと思ってたけど、メイキングを見ると本物だったなぁ。虎の撮影もしていたようなのだが、映画本編には使われていなかった。
そして、秦の時代の過去世界。いつものジャッキー映画のイメージからかけ離れているせいか、こっちの方が話題にもなり、印象に強く残るようだ。ただ話は何がなにやら。紀元前300年頃の朝鮮て…国の名前もないような時代か。そこから秦の始皇帝の元に嫁いできたユシュウ姫を迎えに来たモンイー将軍。彼女を奪い返しにきた朝鮮側の武将(チェ・ミンス)の襲撃を受け、崖下の川に落下する。後を追ってきた朝鮮側の兵士が、何故かユシュウ姫に剣を突きつけモンイーに武器を捨てろと脅迫したり(姫を奪還しにきたんじゃないのかw)、お姫様が薄着で踊ってるのかと思えば極寒の雪山越えをしてみたり(寒いのか暑いのかどっちなんだ…)、そんなことをしてるうちにユシュウはモンイーを愛するようになる。しかし彼女は国の和平を守るために献上された一国の皇女、モンイーとは何もないまま(多分)、始皇帝の元へ嫁いだのでした。
その後の展開がよくわからず、始皇帝はどこかの陣営地で病気になっていて、モンイーの部下、徐貴が不老不死の薬を手にしたが、反乱軍に阻まれて戻ってこられないという情報が入った。モンイーは自ら出陣、この時、老親を持つ一人息子の兵などを陣営に残していこうとするのだが、「死ぬも生きるも最後まで共に!」と兵たちが全員馬に乗るというシーンに、見るたび感動して泣きそうになる; こーいう浪花節な三国志的エピソード、好きなんだよな〜 (…本作で感動したシーンはここだけとも言える… )
結局、始皇帝側近の大臣の一人が裏切っていたのだが、その指示を受けて反乱軍?の親玉になっている趙(チョウ=ユー・ローグァン)や、その下にもう二人くらい主要な武将がいるのだが、唐突に登場して紹介も何もないため、どういう人物で、なぜ裏切り者の大臣についているのかなど、背景や理由などがまったくわからない。つーか、またこいつか! いつもジャッキーを苛めに出てくるムカつく奴だな〜、と、個人的にユー・ローグァンに敵意を感じているK(笑)。顔がキライらしいです(爆)。
で、モンイーは壮絶な死闘をして命を落としたのだが、仙薬は部下の南宮(ナンクン)に託されて始皇帝の下に届けられた。しかし、ナンクンとユシュウが毒味をして不死になり、そうしているうちに始皇帝は崩御するという間抜けな結果になったらしい。そして皇帝の死後、無重力の地下宮殿が皇帝の墳墓になった、らしい…… 無重力? そう、ここで始皇帝が仙薬の前に隕石を手に入れていたことが唐突に結びついて、洞窟の無重力空間に秦時代の王朝が出現するのである。ナンクンとユシュウは二千年以上、ここで暮らしていたらしい。…それを見てクー教授が急に「不老不死の薬はどこだ?」と言い出すのだが、薬が残っていたら始皇帝とか他の大臣とか、もっと他に生きてる人がいそうなものだが…。
ともかく、時は現代。ジャックはその地下宮殿を発見し、夢の中のユシュウと出遭う。追いかけてきたクー教授とすったもんだの末、宮殿が崩壊するのだが、宮殿崩壊の方法(龍の玉を動かす)が入り口に堂々と書いてあってもいいのだろうか。龍の玉って結局、隕石だったのか、隕石が割れたら飛行力がなくなるのか、どんどん謎が増えていくが、とにかく宮殿が崩壊するのでジャックはユシュウに逃げようという。しかし、彼女は泣きながら首を振るのだ。
「あなた、モンイーじゃないのね…」
驚愕。Kはここまで、てっきりジャックはモンイーの生まれ変わりで、前世の記憶を辿っているのだと思っていた。ユシュウは完全にモンイー本人だと思い込んでいたらしい。一体どうしたら、普通の人間が二千年もそのまま生き続けていると思えるんだろうか…と、彼女の正気がわからなくなってゾッとした。
ユシュウは地下宮殿に残ることを選び、ジャックは一人脱出する。ウィリアムもクー教授も命を落とし、この冒険は永遠の「神話」になった…という形で物語は終了するのだが、結論として、モンイーはジャックの前世でもなんでもなかったのだろうか。ジャックとしてはなぜ自分にモンイーの記憶があるのか、それを探す旅をしていたはずだが、結局、明確な答えが出ていない気がする。ま、どっちにしてもユシュウには、生まれ変わりではダメだったと言うことなのだろうが、二千年待った挙げ句、生まれ変わった相手では受け入れられない、というアンハッピーエンドって、すげぇ斬新だな……(ある意味、コメディオチに近い)
ううむ。書いてるうちについヒートアップしてツッコミまくってしまった。こんなにいろいろ書くつもりではなかったのに…トンデモ話って、完全に破綻していればいちいち突っ込む気にならないが、半端にシリアスで入り組んだ筋になっていると、いろいろ気になってしまうんだな。本当のところ、Kはこの映画、わりと好きです。壮大で映像もキレイだし、様々な要素の場面が楽しめる。ただ思わずツッコみたくなるネタが多いのも事実で、実はスタンリー・トン監督の映画に対しては、ストーリーにツッコミを入れていることが多い。恐らく、トン監督の脚本の作り方と自分の感性が、そういう相性なんだろうと思われる…ボケとツッコミの関係性っていうの?(笑)
スタンリー・トン監督、どちらかというと現代アクションの方が得意分野だと思うんだが、こういう武侠映画や恋愛モノも撮るんだね。ジャッキーと久し振りに組んだので、予算もたくさんあるし、新しいことにチャレンジしてみよう!って感じで、振り切った感性の映像はやっぱりすごいね。特にアクションにおける彼の映像は迷いがなく、スピーディで余計なものが排除されていて、見てて気持ちがいい。
あと、インドのネズミ捕り工場でジャッキーが次々にくっついた衣類を脱いでいき、最後に下着一枚になるんだけど、そのパンツについてたピースマークに笑った。 『ファイナル・プロジェクト』 でコアラ付きパンツを穿いてたことを思い出し、ジャッキーとトン監督のちょっとしたお遊び気分が感じられて、なんだかいいなぁと思ってしまった。
最後に、今回の無重力状態でのラストアクションはホントに付け足しのようで、見るべきポイントが見つけられなかった; ワイヤーワークも突き詰めるとこんな感じになっちゃうので、重力に従って宙返りするくらいでやめておくのが正解ですね。ジャックとクー教授のカンフー対決をもう少しちゃんと見てみたかったですよ…
それから、モンイー将軍の時だけ、ジャッキーの声でなかったのはどうしてなんだ…昔の中国語の独特の発音とかがあって、特にモンイーだけ吹き替えになってるんだろうか? 個人的に、北京語の吹き替えってテンション下がるので、モンイーだけ声が違うのがなんとなく違和感だったなぁ、とやっぱりなんだか煮え切らないまま、締めくくってしまう「神話」なのでした。