ラッキースター☆シリーズ編 

五福星 大福星 七福星

G.ハーベストに移籍して 『ヤングマスター』 で大ヒットを飛ばした後、アメリカ映画進出・ 『ドラゴンロード』 の興行的失敗など、ジャッキーには少しばかりの低迷期があった。一気にスターダムに駆け上がったスターにはこういう谷間がつきもので、これをどう乗り越えるかによってその人の真価が問われるとも言えるだろう。この時、同じG.ハーベストで製作者としてそこそこの地位を築いていたジャッキーの兄貴分、サモ・ハン・キンポーが、新たな製作プランにジャッキーやユン・ピョウを加えることを考えていたのである。
アメリカでオールスター映画 『キャノンボール』 が出来るのだから、香港でもオールスター映画を作ろうということ
(だったのかどうか知らないが)で、当時の香港スターたちが名を連ねて作った映画が 『五福星』 に始まるラッキースター・シリーズと呼ばれるものだ。サモハン以外の主演格の俳優陣はカンフースターではないが、ご当地ではそれぞれ名の知られた人々であるらしい。
オールスター映画なので、香港映画を知っていれば知っているほど楽しめる
(…と、思われる)。実際、香港では大ヒットだったそうで、日本でも上々の興行成績を残し、シリーズ化されていったわけだ。しかし、実は日本でヒットした理由は、とにかくジャッキーやユンピョウの人気が爆発していたおかげなのだろう。ジャッキーはいずれの映画でもゲスト出演的な扱いに過ぎないのだが、配給会社が「ジャッキー・チェン主演」と堂々と宣伝してしまったので、日本のジャッキーOnlyファンにとってこのシリーズはすこぶる評判が悪かったりする。「ジャッキー主役って聞いてたのに、全然主役じゃないじゃんか!」という騙され方をする日本ファンは、実はこの頃、非常に多かった。誇大宣伝への反発の声が高まったため、JAROが創設されたという(ウソです)。古参のジャッキーファンはこういう失望を繰り返し、「ジャッキー・チェン主演」という言葉を鵜呑みにはしなくなったのだ(笑)。
つまるところ、このシリーズはジャッキー主演映画と思って見ると失敗するので、あくまでワンポイント出演と承知の上で、ジャッキー以外のその他の魅力を楽しむ心意気が必要となる。ちなみに日本でも、ジャッキーファンより香港映画マニアの方々に、けっこう人気の傾向があるようだ。

サモ・ハン・キンポーを監督にしたこのシリーズ、サモハンのユーモア・センスが感性に合えば、そこそこ楽しめるかもしれない。そうでない人は、間違いなく退屈するだろう。Kは退屈する(爆)。しかし、出番が少ないながらジャッキーのアクションには目を見張るものがあり、単純に「ジャッキーは出番が少ないから見なくてもよい」という結論に達しないところが困った点である。何しろこの時期のジャッキーは日進月歩の勢いで進化を遂げているのだ。
時間とココロに余裕がある時に、ジャッキー目的でなく見るといいかもしれない。そんな「サモハンと愉快な仲間たち」とでも言うべきラッキースター・シリーズを、一気に見ていってみよう。






『五福星』 (1983
【物語】 刑務所で知り合った落ちこぼれ小悪党五人組が、出所後、清掃会社を営みながらマフィアの偽札偽造事件に巻き込まれていくというお話。簡単すぎる説明で失礼。

ラッキースター・シリーズその一。順番なんて覚えちゃいなかったが、コレが一番最初なんですねー。相対的に見て、この三部作の中ではなんとかまとまりがあり、物語としてきちんと作られている映画…だと言ってもいいのだろうか。
このシリーズは昔見た時、正直に言ってつまんない映画だと思っていたが、大人になって見直しても
本っ当にくだらない(爆)。大体がして、香港映画のコメディってオヤジギャグに近いノリだよな。わかりやすいドタバタで、くどくてしつこくて、ダラダラ続く。どちらかというと男性的な感性には合うようだが、女性が見るとシラけてしまう人も多いだろう。Kはそれほど「笑い」に厳しくはないが、サモ・ハンに代表される香港の笑いのセンスは、残念ながら大人になってもあまり面白いと思えるポイントが少ないようだった。
…ジャッキー映画は全体的にわりとテンポがよくて面白いんだけどね。ジャッキー自身が作る映画のコメディセンスは悪くないと思っているが、『ツインドラゴン』 とか 『奇跡』 などでは、中盤がちょっとダレているようには感じている。あ、『ツインドラゴン』 はジャッキー監督じゃないけど;

まぁ物語はあってないようなもので、無駄だらけの映画。イヤ、別にそれが悪いというのではなく、カンフー映画も同じように無駄だらけなのだが、無駄なシーンがカンフーじゃなくてギャグになっているというだけのことだ。ジャッキーのキャラクターとか活躍も、
物語の本筋とは全然関係ないし、ローラースケートで階段の手すりをガーッと滑り降りて店のガラス窓に突っ込んでいくところなんかも、「なんてムダなシーンだろう」とあんまり無駄すぎて、逆に笑ってしまう(笑)。こういう映画は多分、ひとつひとつのエピソードさえ面白ければそれでいいのだ。(ツボにはまるかどうかは個々の感性の問題なので、どうにもならないが ^ ^ ;)
サモ・ハンは今回、仲間たちからいいようにあしらわれているちょっと間抜けなキャラだ。でもちゃっかり皆を出し抜いて、ヒロインとデートしたり、さりげにオイシイ役得。アメリカ映画では「間抜けなデブ」は主人公の引き立て役にしかならないところだが、さすがサモハン!
 「バカにされててもホントは強いんだぜ〜」と裏ボスぶりを垣間見せている(笑)。
で、サモハンが属する五人組とも、彼らが巻き込まれる本筋の事件ともほとんど関係がないのだが、間にいくつかジャッキー刑事のエピソードが混じる。これがまたずいぶんなドジっ子で、張り切りすぎていつも失敗してしまうタイプの新人刑事らしい。痣だらけの顔を壁にくっつけて
「一生懸命やってるのに…」としょぼんとしている表情が可愛すぎる(笑)。ハンバーガーショップでサモハンと協力して強盗と大立ち回りを演じたり、町ですれ違ったユン・ピョウといきなり喧嘩を始めてみたりと、大暴れで映画を脇から盛り上げている。ユンピョウの出番はジャッキーとのケンカシーンのみで、お互い刑事だとわかると急に親近感を覚えたらしく、仲良くなっていた。この時のユンピョウは当時流行の若者風の髪型で、アイドルみたいにおしゃれな青年スタイルになっているのが微笑ましいね(笑)。日本で大人気だった頃なのかな〜( ^ ^ )
そしてジャッキーは彼女とローラースケートの競技大会に出かけ、見事なテクニックを披露。開脚で滑りながら平均台の下を潜り抜けちゃうシーンは、本人がやっているのかどうか知らないが、毎回感心して見とれてしまう。氷上のプロスケーターの技を見ているようだ…
ところが、このローラースケート大会の傍らで、マフィアの未来の婿養子?(笑)
タイポーが持っていたスーツケースをマース演じる泥棒がひったくって逃げていく。マースの相棒が一昔前の「オタク」そのままのスタイルで笑える。ジャッキーはローラースケートを履いたまま、引ったくり犯を追いかけて車道を走る走る! 併走している車たちは一体時速何キロくらいで走っているんだろう。車の上をローラースケートで飛び越えたり、走っているタンクローリーの下を潜り抜けたり、ローラースケート・アクションが満載だ。特に、背後に車底の高い四駆車が迫った時、道路にペタッと寝転んで頭上を通過させる場面。アニメのワンシーンを見ているようで、何回見ても笑ってしまうんだよなぁ(笑)。
あと、警部のペットのカメをめぐるやりとりもすごく好き。カメのいない水槽をそーっと手で隠したり、アルバートの生死を確かめる時の表情や声のトーンも面白くて、結構笑える。ジャッキーが出ていないその他のダラダラしたコメディ・シーンも、このくらいのテンポでさらっとやってくれたら、もっと全体が面白くなったんだろうな…。
とはいえ、見てからしばらく経った後、ふと
「もう一度見てみたい」という気分にさせてくれる、不思議な作品でもある。ふっきれたベタギャグのバカバカしさが、香港人のパワーを感じさせてくれるのかも。映画の出来としては「どうだろう…」という感想を持つのだが、何故かそれほど嫌いになれない、どうにも変な魅力のある映画だと思うのである。
ちなみにこの作品は、日本では 『プロジェクトA』 後に公開されたので、ジャッキー大ブームだったのだろう。陣内孝則が歌う日本版主題歌
「SUPER STAR」がテレビなどでもよく流れていたものだ。ジャッキーのアクションシーンにもBGMとして使用されていて、非常に楽しい場面に仕上がっている(日本公開版のみ。通常のDVDでは挿入されていない)
この歌が流れる東映版の予告編を見ると、ほとんどジャッキーの出ているところだけを集めたダイジェスト版である(爆)。ちょっと長い予告編で見られたら、この映画のジャッキーの登場シーンのほとんどが見られるんじゃないだろうか…
(ユンピョウに至っては、予告編で十分/笑)

『五福星』 は 『プロジェクトA』 前に製作されていて、実はジャッキーにとってもいろいろな転換期のポイントにもなっている。香港を舞台にした現代劇であるとか、初めての刑事役であるとか、仰天スタントアクションの始まりなど。そういう視点から考えると、その前の 『バトルクリーク・ブロー』 出演はジャッキーの芸歴として、それほど無価値なものには留まらなかったといえるのかもしれない。
『ヤングマスター』 でひとつのジャンルの到達点に達したジャッキーが、そこから 『ドラゴンロード』 『プロジェクトA』 と製作していく本流の間に、 『バトルクリーク・ブロー』 や 『キャノンボール』 、この 『五福星』 などの出演で吸収していったものは案外、少なくなかったらしい。そういう意味でこの辺りの転換期の作品たちは、ジャッキー映画のひとつとして考える時、もう少し評価をしなおす必要のある作品といえるのだろう。






『香港発活劇エクスプレス 大福星』 (1985)
【物語】 一億ドル相当のダイヤを盗んだ警察関係の男が日本に逃亡。日本の暴力団に匿われ、遊園地の地下に隠れ家があるらしい。男を追っていた香港警察の刑事マッスル(=ジャッキー)は相棒のリッキー(=ユン・ピョウ)を人質にとられ、孤児院仲間だったキッドサモ・ハン・キンポー)に協力を要請する。キッドは同じ孤児院仲間たちを集めて日本へ飛び、マッスルと協力して暴力団組織と戦う、という物語。……多分、そんなカンジ。

ラッキースターシリーズ第二弾。題名は一般的には 『大福星』 で通じる、おそらくジャッキー初の日本ロケ作品である。
しかしまぁ、物語としては前作よりいい加減さに拍車がかかったようで、上の本筋は書いていても荒唐無稽な印象だが、実はあってもなくてもほとんど意味がない(笑)。よく考えてみるとそんなアラスジだというだけで、登場人物たちが物語の筋を追いかけていないため、「なんとなくそういうスジが存在する」程度のことだ。…そんな風にして作れる映画もある、ということにはある意味、新鮮な驚きを覚えるけどね(笑)。
子供の頃に見たおぼろげな記憶で、「日本の遊園地を舞台にしたジャッキー映画があったはずだけど、どの映画だったかなぁ…」と思っていたが、この 『大福星』 を見てようやく思い出した。 『デッドヒート』 と多少混同していたらしい。今回の 『大福星』 は
「前作の五福星が日本で大ヒットありがとう」的な、日本ファンへのサービス精神にあふれた雰囲気の映画だ。ほとんど日本を舞台にして、富士急ハイランドやら三菱自動車やら、芸者やヤクザや半丁博打など、不思議な日本文化がゾロゾロ出てきている。日本人として嬉しいことは嬉しいのだが、んん〜ん……イロイロ間違っているぞ(笑)。
ジャッキーの下宿先?にしても、かなり笑える。洋服ダンスの奥に隠し扉があったり、電話が変なところに隠されていたりして、忍者屋敷みたいな日本家屋だ。玄関から入ったところには囲炉裏端なんぞあったりして、そこでジャッキーとサモハンが大乱闘をしてくれる。
一体ドコにあるんだよそんな下宿(爆)。まぁ、香港映画に限らず、この頃の海外映画の「日本」のイメージは大体がこの程度だろう。Kも幼い頃は、カンフー映画で見た風景が中国の現代風景のように、漠然と勘違いしていたように思う…(苦笑)。
で、そのジャッキーの出番は今回は冒頭と終盤のみで、中盤の一時間くらいは全く登場してこない。最初の約10分間、ユン・ピョウと共に追跡劇をやったり、遊園地でアクションをしているところは主役格にすごい活躍をしているのだが…その後は完全にフェードアウトしている。
しかしまぁ、この観覧車をするする登ったり降りたりするシーンは、昔見た記憶にもよく残っている。現代日本が舞台だと、見慣れているものに人が登っていく光景がやけに新鮮に感じるなぁ。いいなぁ、日本でこんなアクションロケやるんだったら、今なら絶対見学に行くところなのに( ^ ^ )。

そしてサモ・ハン率いる五福星。いや、五人組。設定は前回と同じ五人の小悪党チームなのだが、前作からメンバーが一人入れ替わり、キャラクターの性格や互いの関係も異なっているので、「五福星」の続編という形で作っているのではないらしい。サモハンは今回、それほどお間抜けキャラではなく、仲間うちにもっとバカっぽいのが登場。このチビという突き抜けたおバカを演じているのが、若き日の
エリッツ・ツァンである。
いまや貫禄のあるサブキャラを演じることの多いエリック・ツァンだが、昔はその容姿を生かして、徹底したいじられ役に回っていることも多かった。そのくせ、当時から映画界でもかなりの実力者だったと聞く。まったく、彼にしろサモハンにしろ、カメラの前では完全な道化者なのに、愛嬌のある外見からは想像もできない、裏では敏腕プロデューサーだというのだ。違う意味で
「役者だなぁ」と感心してしまう。
ただし、このエリック・ツァン扮するチビというキャラのような、ちょっと頭の弱い人物の言動を「笑い」にする香港ギャグのセンスには、正直、あまりついていけない。見ているとなんだか可哀想になってくるんだよな;
そして、この五福星のお目付け役に美人刑事フラワー
シベール・フー)がついて、サモハンたちをサポートすることになる。同じ屋根の下に美女がいるなら、手を出さないとは男がスタるぜ! …ってなワケで、サモハンらは同居することになった彼女をめぐって延々とセクハラ行為を繰り返す。わけのわからない「しばり組」の登場とか、二人目くらいまで見ていて、このくだらないギャグが五人目まで続くのかと気付いた時には
「うわぁ…;(絶句)」
 と、どうしようかと思ったぞw
そんなことをだらだら繰り返して、やっとジャッキーとサモハンが合流。今回のジャッキーとサモハンの関係は孤児院時代の仲間で、現在はサモハンは泥棒で、ジャッキーは刑事になっているという設定だ。実は 『プロジェクトA』 のつながり?という気もする。そういえば当時も、「プロA」でジャッキーとサモハンの旧知らしい関係がよくわからなかった部分が、 『大福星』 で説明されたような気分がしたものだ。

で、再び遊園地でヤクザと対決。懐かしの「Dr.スランプ」アラレちゃんキグルミ姿でお化け屋敷に入ったジャッキー、次々に飛び出してくるお化けのからくりと刺客の両方に翻弄されつつ、地下組織に潜入した。何故わざわざ遊園地の地下にヤクザの隠れ家があるのかとか、考えるのは時間の無駄というものだ(爆)。
この作品のジャッキーは出番は多くないが、全体的にカッコよくて実はかなりお気に入りである。両側が障子になった和風の廊下を歩いていく場面など、精悍な顔つきで、緊張した表情の演技もうまいなぁと思う。衣装も 『五福星』 の全身黄色のウェアよりよっぽどいいし、意外とカメラワークなども凝っていて、見ごたえがあるんだよな。
しかし、コミカルなシーンに騙されがちだが、飛び出してくる相手を人間・人形の識別もしないで銃で撃ったり、腕や足を切り落としたり、ここのアクションは意外と過激な展開であるw 多くは人形なんだけど、三人くらいは死んでるな。しまいには床から飛び出してきたゾンビの口に、思わず銃口を突っ込み、頭をふっ飛ばすという…生身の人間だったらすごいスプラッタ映画になっているだろう。ジャッキー、ビックリし過ぎだよw
(よく 『ファースト・ミッション』 のラストバトルで、ジャッキー映画には珍しく次々と敵が殺されて残酷だと指摘されるが、こっちも大概なんじゃないかと密かに思う)
少し話がそれるが、最近
(2012年)発売されたBDやDVDに収録されている日本語吹替え版で、このあたりの格闘シーンで流れるBGMがいい雰囲気を出している。日本版主題歌「幸運序曲〜大福星のテーマ〜」を中心に、日本語吹替え版ではあちこちで独自のBGMを挿入した編集となっていて、場面の雰囲気がガラッと変わっている。もちろん、Kの大好きな石丸さんと水島さんの遣り取りも楽しくて、吹替えも一見の価値アリと言えるだろう(個人的に)
その後の大乱闘も、ジャッキーv.s.
ディック・ウェイ(なぜか学ラン姿)の闘いも結構カッコイイし、シベール・フーと日本人女性ボディビルダー・西脇美智子との女同士の激しい闘いなんてのも見どころだ。サモとユンピョウのアクションはもう少し見たかったけどな。ユンピョウもなぜ捕まっていたのか理由が不明だが、助け出されて指名手配の男(ラム・チェンイン)を自らとっ捕まえて、大団円となる。

ホントに、その場のノリだけで映画を作ってしまうサモハンの本領発揮な作品である。おそらく脚本なんてほとんどないのだろう。行き当たりバッタリな展開は勢いがあって、そういう意味では嫌いではない。作っている連中が一番楽しんでいるんだろうというのは、NG集などを見ていればよくわかる。
客観的に評価するならまぁ…駄作になってしまうのだろうが、ひとつひとつのギャグは、見る人によってはとても面白いのかもしれない。
……しつこいようだが、あくまで笑いの感性が合えば、の話なので、そこんとこヨロシク。






『七福星』 (1985)
【物語】 パタヤで殺された情報屋が香港の友人当てに送った手紙に、ある組織に関する重要な情報が書かれていたらしい。フラワー刑事はキッド(=サモ・ハン・キンポー)ら五人組に、この手紙の受取人の女性を保護することを依頼。そしてこの手紙をめぐって、フラワーとマッスル(=ジャッキー)、リッキー(=ユン・ピョウ)ら特捜班の刑事と、三人組の殺し屋が対決する。

ラッキースター・シリーズ第三弾。今回は 『大福星』 の設定がそのまま引き続いて、完全な続編という位置づけである。一応、『大福星』 よりちゃんと物語を追っている感じではあるが、ラストはほとんど消化不良で、問題の手紙がどうなったのかはさっぱりわからない。なんというか、全体的なテンションとか方向性がブレてしまっていて、散漫な映画ではある。
前回、フラワー(
シベール・フー)といい雰囲気だったサモハンは冒頭でフラれてしまい、物語終盤まで精彩を欠いたショボクレっぷり。残りの四人も相変わらず女の子にもてたいと様々な策略をめぐらせたり、一緒に暮らすことになった護衛すべき女の子(ロザムンド・クアン)に、前回と同じようなセクハラ行為を繰り返している。メンバーが一人入れ替わったり、さらに騒々しいメガネ男も加わっているが、コメディとしての振り切れ方が中途半端な印象。個人的にはどう演出したって面白くないことに変わりはないだろうが、 『大福星』 の方が吹っ切れていた気がするね。
ただし、アクションシーンだけはちょっと頑張っている。悪役側の殺し屋に結構なカンフー俳優を据えたことで、カンフー映画の要素が濃くなっているのだ。おかげで五福星たちのアクションは減っているが、ジャッキーやユンピョウはかなり本腰を入れたバトルシーンに挑んでいる。
これも本筋とは全く関係ないが、ジャッキー、ユンピョウ、そして
アンディ・ラウ演じるラッキーの三人が、ペプシコーラの倉庫で大立ち回りをする場面がある。ここの闘いは実に見ごたえがあるね! これだけを見るために、DVDを買う価値がある!(爆)
アンディ・ラウは当時はまだ駆け出しだったと思われるし、基本的には演劇学校で武術を学んだだけで、生粋のカンフー俳優ではない。それでも生来の運動能力の高さで、百戦錬磨のカンフースターたちを相手にかなり頑張ったアクションを見せている。拳を突き入れ、肘を軸にして繰り出す二発目のパンチがなかなか個性的。というか、全体に肘打ちの技が多いのは、この時の振り付け担当さんの好みかな( ^ ^ )。ユンピョウやジャッキーの間でも見劣りしないキレのある動きと、そう演出させている武術指導の手腕はなかなかのものである。
そしてユンピョウ。シリーズ中では本作で最も出番が多く、ユンピョウファンにとってはありがたい。アクションも「大福星」では物足りなかったが、今回は素晴らしい動きを見せてくれているね。あの側転宙返りから片足着地の、半身ひねってさらに一回転してからの回し蹴りはヤバすぎるだろ; どれだけ身軽なんだよ; ユンピョウにしかできない技だよね…NG集ではさすがの彼も何度か失敗していたが、あれでワイヤーなしだよ。凄すぎるなユンピョウ
ジャッキーと比較すると、ユンピョウの動きは
華麗 という言葉がピッタリだ。細身の身体から繰り出される力強い攻撃と、全身がバネのようなしなやかさ。猫のような平衡感覚で重心移動をしていて、絶対バランスを崩さない。着地点でピタッと静止できる美しさがあって、重心にブレがないんだよな。
対してジャッキーは重心がブレまくっている。左右に激しく揺れて、床を転げまわったり四つん這いになったり、そこから奇想天外な動きで攻撃を繰り出していく。だから見た目は不恰好でドタバタした印象で、トータルで見ると決して美しい動きではないのだ。ただ、その意外な動きがいつも予測不可能で、目が離せないということだろうか。
そして、いつもどこかダンスをしているようなリズム感がある。この場面でも、ジグザグにステップを踏むようなフットワークで、左右から来る敵の懐をかいくぐり、払いのける。倒されると同時に相手の足を払ったり、瓶を割られた直後にハイキック攻撃をしたりと、防御や攻撃が混然としながら畳み掛けていくのだ。その激しい動きとあまりの速さに呆気に取られてしまうのだが、根底に刻まれているリズムが、観客を置いてけぼりにしない。
なんだろう、なかなかうまく言い表せないのだが、ジャッキーの動きはリズムに乗る気持ちよさと、予測を裏切り続ける意外性の快感と驚き、また危なっかしい体勢でつい応援したくなる庶民性と、不意にそれを振り切って超人技を繰り出すヒーロー性、みたいな混沌とした面白さを感じるんだよな。
今回、ユンピョウやアンディのバトルと連続してジャッキーアクションを見ていると、つらつらとその違いを真剣に考えてしまった。ともかく、この倉庫での闘いはジャッキー的にもかなり難易度の高いアクションだと思う。
ディック・ウェイとのガチンコ対決もすっかりお馴染みさんで、息が合ってますねぇ(笑)。

んで、なんだかんだとあって、結局ラストは殺し屋三人組とサモハン、ジャッキー、ユンピョウの三人がカンフー対決。この殺し屋は
鐘發(チュン・ファット)、リチャード・ノートン倉田保昭氏と、国際色豊かでなんとなくバランスがいい。最初に見た時は倉田さんを知らなかったので、「赤井英和に似てるなぁ」とか思っていたら、終盤で突然日本語を喋ったので驚いた。そうか、この人が和製ドラゴン、かの有名な倉田保昭さんかぁ、と納得。70年代頃の香港カンフー映画では欠かせない悪役俳優だったそうだが、ジャッキーとの共演は本作のみだ。ただし、ジャッキーが無名の頃からある程度親しかったらしい。日本でも「倉田プロモーション」というアクションクラブを立ち上げ、日本映画のアクション演出にも大きく貢献している方である。
わりとどうでもいい話。 『五福星』 でジャッキーやサモハンが着ていた、目の醒めるような原色系の上下のトレーニング・ウェアはインパクト絶大だったが、この 『七福星』 の倉田アニキの靴下もかなり驚きのカラーチョイスだ。格闘している最中も、ズボンの裾からチラチラ見えるソックスに目が行ってしょうがない(笑)。香港映画に衣装担当がいるのかよくわからないが、日本人としては、ご本人が選んだ自前の衣装ではないことを祈りたいです(苦笑)。
……個人的にはサモハン監督のセンスじゃないかって思うけど…( ^ ^;)
それはともかく、ここは
倉田のアニキとジャッキーの夢の対決である。…のはずだったのだが、ジャッキーが左肩を銃で撃たれて負傷してしまったため、まともに戦えなくなってしまった。撃たれた時にはびっくりした。ああ〜、ジャッキーが銃で撃たれたのはどの映画だったかな? と思ってたら、本作だったか〜。ジャッキー、片手だけで倉田さんの十手攻撃を抑えているんだけど、とても敵いません。痛そう…(涙)
おかげで倉田さんの相手をするのはサモハンだ。ジャッキーがやられちゃったので、代わりにテニスラケットを武器にして叩きのめしている。
「サモ、おいしい役だなぁ…」と思ってしまった。リチャード・ノートンもサモがやっつけたしね。
残る一人はユンピョウがこれまた華麗なアクションで仕留めて、なんだかわからないままエンディングに突入する。結局、肝心の手紙や敵の親玉はどうなったんだ。消化不良この上ないが、そこがサモハン映画の特徴でもある(苦笑)

ラストに突然、エレベーターから何十人もの人々が降りてきて、何のコントなのかと思ってしまう(笑)。そのままエンディングが流れ出すのだが、日本公開版ではジャッキーの歌う
「無問題」に合わせてシリーズのハイライトシーンと、本作のNG集が収録されていて、三倍くらいは楽しめる(ブルーレイ版にのみ収録)
ついでに、日本語吹替えバージョンはわりと日本オリジナルのBGMが挿入されていたり、バトルシーンで入るテンポのいい曲など、これまた一見の価値はあると言えるだろう。

このラッキースター・シリーズはこれで一応の終結を見たが、その後サモハンは引き続き、別のオールスター映画などを何度か手がけている。 『十福星』 とか 『上海エクスプレス』 とか。ジャッキーとはこの映画辺りから少しずつ仲が悪くなり、 『ファースト・ミッション』 後にいったん距離を置き、 『サイクロンZ』 でユンピョウとの三人共演をした後はしばらく、一緒に仕事をすることはなかった。
個人的には、サモハンにはジャッキーと共に映画に出演していて欲しかったところだが、彼自身はこのラッキースターズとか、その後のキョンシーブームを巻き起こしたオカルトコメディ映画など、コメディ系の路線を中心に、監督や製作者としての地位を固めていったようだ。もちろん、それとは別に武術指導監督としての活躍もしていたのだろうし、彼自身が製作した映画にもアクションの振り付けはあったわけだから、カンフーやアクションから遠ざかったということではない。
ただ、ジャッキーがカンフー映画に固執しなかったように、サモハンもカンフー俳優でありながら、カンフーアクションにひたすら執着することはしなかった。面白けりゃいいんだと、次々に新しい分野へと製作の幅を広げていった、パイオニアタイプの映画人だと思う。ジャッキーとは方向性は違ったかもしれないが、根底に流れる京劇的な考え方はやはり、同じものだったのではないだろうか。

結局のところ、彼らはひたすら一途な、根っからのエンターティナーに間違いないのである。



〜 ラッキースター編・終了 〜