色モノ好きは集まれ!編

シティーハンター デッドヒート
さて、ここで取り上げる作品は、いわゆる「珍作」と評されていることが多いものたちである。
中心となる元ネタなどがちょっと捻ったチョイスであるため、一般受けしにくいというか、ジャッキー作品にしては視聴者層を絞っている印象がある。ファン内でも好みが分かれることが多いようで、世間的には評価がイマイチといったのが正直なところだろう。
映画への間口を狭めているのが意図的とは思わないが、K個人はこういう作品も遊び心を感じられて、けっこう好きだ。ちょっと味が違うパターンだとは思うが、ジャッキーの長い芸歴を全体から俯瞰して見た時、なかなか面白いアクセントになっているのではないだろうか。作品自体の出来も、駄作というほどのものではない。香港映画らしいハチャメチャさとか、フリ切れ方を楽しむ許容器(キャパ)がある人なら、充分楽しむことが出来ると思っている。

ある程度ジャッキー作品を見てきて、王道から少し外れたものを見てみたい、というくらいに踏み込んだジャッキーファンに対しては、いい意味での珍味としてお勧めしたいタイプの作品たちである。





『シティーハンター』 (1992

【あらすじ】 香港で私立探偵をしているリョウ(ジャッキー)は、日本人の今村氏から家出した娘の
清子(後藤久美子)を連れ戻して欲しいと頼まれる。しかし、亡き親友の妹で、今は助手の香(ジョイ・ウォン)がリョウに愛想をつかし、バカンスに行ってしまったため、家出人捜索をそっちのけで、香を追いかけて豪華客船に潜り込んだ。
出航した船内で、招待された資産家たちを狙ったシージャックが発生、乗客はすべて人質に取られる。リョウは情報を得て船に乗っていた女刑事・
野上冴子(チンミー・ヤウ)、たまたま乗り込んでいた清子らと共に、人質救出作戦に乗り出すが……

一般には
珍作との呼び声も高い 『シティーハンター』 、知らない人はいないと思うが、北条司氏の同名漫画の実写版である。香港では日本の漫画が原作である実写版映画をけっこう作っていて、最近だと 『頭文字D』 なんて有名だね。
どんな場合でも、人気のある原作作品を映像化するのは賛否両論があり、特に日本では熱烈な原作ファンほど他メディア化を嫌う傾向がある。漫画は特に顕著だろう。 『シティーハンター』 は洗練されたスマートな絵柄で男女問わず人気のある原作なので、実写版に対する拒絶反応は大きかったようだ。しかもこんな香港的クダラなさ全開の映画じゃあなぁ(笑)。不評の半分以上は原作ファンの声で、残りがジャッキーファンの「ジャッキー映画にしてはバカバカしすぎる」と思った人たち、ってところだろうか。
おかげで日本ではいまだにDVD化されていない、とてももったいない状況になっている。少し前に名作
『ファースト・ミッション』がようやくDVD化され、どうやら日本企業が出資した作品は利権がらみで、国内でのDVD化がとても困難であるらしいことがわかった。ということは本作もサントリーさんがその気になってくれないと、幻作品になってしまうかもしれない。ううむ、嘆願書でも出すかな。
そんな一風変わった本作について、物忘れ大王のKが持っていた断片的な記憶は、
「ストリートファイター(というゲーム)の実写版をやっていて、ジャッキーが女装していた」 「漫画と同様、巨大ハンマーで香がリョウをぶん殴っていた」という極端な印象である。原作はもちろん読んでいたが、特別にファンではないので漫画との違いに関心はなかったが、映画としてそれほど面白かったという記憶もない。しかし今回、見直してみて、
「…なんだよ、面白いじゃん」 とか思ってしまった。
ていうか、かなり好きかも。不評が多い分、ハードルが低かったせいかもしれないが、思ったより全然イケてる作品だと思う。少なくとも 『ドラゴン特攻隊』 の方がよっぽど酷かったぞ。
(比較するなって;)
…最近、香港映画も腐るほど見てきて、いい加減、香港的コメディに慣れてしまったのかもしれない。このセンスに慣れるというのもいかがなモノか、と若干の不安を残しつつ、見ていってみよう。

監督は、
こういうおバカ映画を撮らせたら香港一(笑) の迷匠・バリー・ウォン。自作 『ゴッドギャンブラー』 がどれだけ好きなんだか、今回も「豪華客船といえばカード遊び!」とばかりに、ギャンブルシーンを入れることは忘れない。でもアクションについてはジャッキーの主張がかなり通っているらしく、ラストのカンフーバトルなどは素晴らしい出来栄えだ。ある意味、香港映画の原点回帰というか、カンフー映画としてはてもよくできた一作といえるだろう。

原作 『シティーハンター』 の主人公名は冴羽 僚
(この文字がブラウザに表示されなかったらゴメン;)、香港名は孟波(マンポー)になるらしい。この少し前に「孟波」という、北条先生非公認映画も香港で作られたことがあるそうだ。槇村や冴子はそのまま広東語読みしてるけど、香はちょっと違う漢字を当てているらしく、呼び方が違うようだ…(どの字を当てるのかは不明)
裏世界では名の知れた正確無比のスナイパー、ただし無類の女好き。そんな設定そのままのジャッキー、今回はけっこうビジュアルがよいです。白いスーツに身を包み、前半に着ていた胸元のアクセントになる赤いシャツとか、原作通りだけど似合っててカッコイイ。後半はシャツもすべて白になり、舞台の船全体が白が基調となっている中にうまく溶け込んで、バカンスっぽい爽やかさで統一されている。
髪型もスッキリしていて、この時期のジャッキー映画の中で一番好き。不思議なことに、前後して撮影されたと思われる 『ポリスト3』 より若々しくてカッコイイんだな。ジャッキーは動きが激しいので、多少乱れてもまとまりがいいスタイリングが必須といえるだろう。
女性陣の衣装も、ちゃんとスタイリストさんがいて選んだぞって感じで、見栄えがしている。例えばゴクミの白い衣装は動きやすくて可愛らしく、ジャッキーの白と合わせた感じになっているし、ジョイ・ウォンのドレスは黒色で、ゴクミ&ジャッキーと対照的だ
(そしてチンミー・ヤウは赤だね)。こういう、画面としての色彩演出はなかなかいいバランス感覚だと思うし、リョウがカッコつけてポーズを取る時のBGMなんかも、ベテラン監督らしい安定感がある。特にジャッキーのビジュアルに関しては、 『ツイン・ドラゴン』 辺りから微妙に作品ごとの差が大きいので、そこら辺もやっぱり評価の一端にはなるかな。
さらに、ドタバタコメディ調に合わせてジャッキーの表情がとても豊かだ。
ビックリしたりひっくり返ったり泣いてみたり、ブルース・リーとスクリーン越しの会話まで果たしてしまい、
「ひゃ〜!」と逃げ出したりしている。バカバカしいんだけど、そんな古い映画の演出もあるせいか、 『酔拳』 とか 『笑拳』 の頃を思い起こさせるジャッキーのくるくる変わる表情と大袈裟なリアクションが、なんともいえず魅力的だ。やっぱりジャッキーはボディパフォーマーだなぁと思ってしまう。
そのくせ、歳を重ねた大人っぽい凛々しい表情も見せてくれて、これまたかっこいい。日本語吹き替えでも見たのだが、こういうコミカルな演技をさせたら声優・石丸さんも本領発揮だなぁ、と思うくらいに吹替え版も楽しいのですv

で、今回も三人の女性が共演者となるわけだが、まず後藤久美子。経歴についてはよく知らないので省略(爆)。本作ではジャッキーとの絡みが一番多く、ちょっとワガママで子供っぽいけど、根は素直で育ちのよい、なかなか可愛いヒロインだ。新体操が得意という設定らしく、頑張ったアクションを披露している。彼女自身もすごいし、スタントさんは雑技団の方なんだろうかと思わず感心してみたり。
そしてジョイ・ウォン。言わずと知れた
『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』 で有名な女優さんだが、今回は溌剌とした元気のいい女の子を演じている。 『ゴッドギャンブラー』 のアンディ・ラウの恋人だった時もこんな感じで、Kは彼女に対してこういう役柄の印象の方が強い。彼女が演じる「カオリ」はリョウを慕っているが、リョウは兄貴との約束があってカオリにそういう感情を抱かないようにしている…という、原作どおりのちょっと切ない、つかず離れずの距離を置いている。こーいう関係、好き〜( ^ ^ )。 ストレートに焼きもちを焼いて癇癪を起こしたり、ふっと見せる女らしさが可愛いジョイ・ウォン、脚線美もなかなかのものですv
野上冴子を演じるのはチンミー・ヤウ。この方も香港では人気女優かな。こっちは色気たっぷりの魔性の女性
(という設定のハズ)、プロポーションはよいし、リョウとも絶妙のコンビネーションプレイを見せてくれる。が、原作と違ってお互いに対する感情がサバけているらしく、リョウとの関係よりは、高太(コータ)というゴッドギャンブラーくんと微妙な恋愛模様を見せている。この高太は完全にバリー・ウォン的オリジナルで、リョウともまったく接点がないまま活躍しているんだが、仕草やトンチンカンな衣装が、微妙に笑いを誘うなぁ(笑)。
ジャッキー映画にはわりと女性の主要キャラが多く登場しているのに、色気のない展開のまま終わってしまうことが多い。しかしこの物語においては、ラストで今村氏から清子との結婚話をもちかけられ、黙って聞いているジャッキーのポーカーフェイスな表情や、クールな素振りをしながら慌てて香を追いかけていく下りなど、進展はなさそうだけど香との関係を応援したい感じで、いいんじゃないかな。

そして忘れちゃいけない、カンフーバトル。これがまた今回は素晴らしくいい出来だ。本当はリョウは銃のアクションが主流のはずだが、まぁそんなことは気にしない(笑)。中盤の映画館での格闘とかはヒジョ〜にバリー・ウォン風味で、ストリート・ファイターのギャグなんて昔見た時は呆れ果ててしまった気がするんだが、今見るとけっこうよくできてるよね(笑)。
Kはゲームにはまったく無知なのだが、このゲームぐらいはかろうじて登場人物を知っていてよかった。力士の連続張り手でいっぱい手が出ているシーンとか、北斗の拳の漫画みたいで、実写でここまでリアルに再現できるんだなーって感心してしまった。テキトーに遊び感覚で作ったって感じじゃなく、画も音も忠実に画面作りをしたバリー・ウォンのこだわりっぷりに、ある意味、賞賛したい気分になる。
ちなみにこの時、ジャッキーの相手をした金髪外人は、登場してすぐの自主トレーニング風景がなかなか迫力があった。これはジャッキーと対決する相手なのかなと思っていたら、香の危機に飛び込んできたリョウと早速真剣勝負。ジャッキーの真剣な表情がカッコイイし、マクドナルド大佐に銃を突きつけられた時のコミカルなやり取りもすっごく好きだ。
この金髪さんが、ゲーム格闘でジャッキー扮する春麗に負けてしまうという情けないことになってしまい、実はラスボスは
リチャード・ノートン。意外ーと思ったのはKがリチャード・ノートンについて 『ナイスガイ』 の意地悪なボスのイメージしかなかったから。なんだよこの方、よく見たら 『七福星』 にも出てるし、カンフー映画の常連じゃんか…
このリチャード・ノートンとの対決、ジャッキーにしては珍しく一対一のストレートな一騎打ちだ。ジャッキーは 『ドラゴンロード』 以降、ラスボス対決をしない。大体が集団格闘・乱打戦、そうでなければ落下・爆破・倒壊・クラッシュといったアクション演出を好む傾向があることはいまさら言うまでもない。ガチンコバトルは 『スパルタンX』 などのサモハン監督の時に限り、いわゆるカンフー映画からは明確な意志を持って遠ざかっているんだね。
今回はサモハン不在での久し振りの長丁場の一騎打ち、しかもサモハンたちの演出と違って、コミカルで動きが大きい。ジャッキーらしい振り付けで、劣勢の時はあちこち逃げ回り、有利になると急に強気になり、意気揚々と攻撃に転じるといったお調子者っぷりも 『酔拳』 あたりのキャラと似ているのだ。特にトンファーを使うところなどは 『拳精』 を懐かしく思い出したり、そんなカンフー時代のジャッキーに戻ったかのような妙なワクワク感がある。こうして見ると、サモハンは
「攻撃が最大の防御」的な振り付けだけど、ジャッキーは大体いつも「逃げるが勝ち」的な感じで、比較して見ると面白い。
相手の持ってる武器も、どういう仕組みだかの多節棍に変化したり、なかなか手ごわい。たまにはこういう一人の敵と長く戦う最終バトルも悪くないよなぁ、と非常に満足した気分になれる対戦カードだ。ま、最後はマクドナルド大佐が
うっかりな自爆をしてしまい、決着というには今ひとつだったが、映画全体のおバカなテンションからずれなかったのも、それはそれで正解だといえるだろう。
どうでもいい程度の話だが、広東語バージョンのエンディングではTMネットワークの宇都宮氏の歌が流れるのだが、日本語吹替えのエンディングはジャッキーの歌う「城市猟人」が流れている。日本語吹替えの方こそ日本の歌が流れるべきだと思うんだが、いかがなものか…?

バリー・ウォン作品は勢いはいいが、下品だったり残酷だったりすることが多く、手放しで好きといえる監督さんではない。しかし、たまにはチャウ・シンチーやチョウ・ユンファなどのいい魅力を引き出すこともある。この 『シティーハンター』 も傑作とは言わないが、ジャッキーの魅力を再発見できるところが多く、テンポのよい娯楽作品という位置付けは出来るだろう。イロモンかな、とは思うが、原作にそれほど思い入れがないなら、見ても損のない作品だと力いっぱいお勧めしておく。
…ああ、DVDにならないかなぁ……(爆)







『デッドヒート』 (1995)

車が大好きなジャッキーが、趣味的要素を満載に詰め込んでいる映画。それを聞くだけでもうB級チックなんだけど、まさか個人の趣味だけで大金をつぎこんで映画を作ったわけではないだろう。カーレーサーの悪党と主人公がサーキットで因縁の対決をする という、ごくシンプルなカーアクション映画である。
最終的な決戦の舞台が日本の仙台にあるサーキットを貸し切って行われているが、一部のカーレースマニアに言わせると、「リアルっぽくなくて興醒め」らしい。この手の「詳しい人」の意見は偏りがあるので話半分に聞く必要があるが、世間一般の評価は総合的に辛口であることが多いようだ。Kは車やレースに興味がないので良し悪しはまったくわからないし、素人が見て面白ければそれでいいと思っているので、個人的にはけっこう好きな作品になる。

さて、この作品、日本公開版はアジア公開版より15分ほど短縮されている。
そのため、カットされた部分も見てみたくて、アジア版(US版)も収録された二枚組のDVD「スペシャルエディション」を取り寄せて見比べてみた。しかし、アジア版DVDの質が悪くてちょっとガッカリした。スタンダードサイズだし、日本版ではカットされているレアシーンのほとんどが、そこだけ英語吹替えなのだ。広東語で見てるのに、場面の途中で急に別の声優が英語で台詞を喋ったりするので、見づらいったらない。――だったら最初から全編英語で見ろって?その通りだ(爆)。
で、見比べてみた結果、
日本版はうまくカットしているなぁと感心した。話全体が大雑把で説明が不十分なのはロングのアジアバージョンでも変わらず、どこかのエピソードを丸ごと抜いているのではないことがわかった。あちこちのシーンから不要な部分を少しずつ削っているだけなので、映画全体が締まって、テンポがよくなっていると思う。
オープニングは日本の三菱自動車工場で研修の風景から始まる。これがまず、レーサーとしての学校なのか、自動車開発の技術研修生として来ているのかがよくわからない。ジャッキーの役名は広東語では「
火(フォー)」なんだけど、英名はジャッキーで、英語や日本語の台詞の際は「ジャッキー」と呼ばれている。(ちなみに英語吹替えではアルフレッド。なんでやねん;)
フォーの父親は香港で車の修理工場を経営していて、レース車のチューンナップをしたり、違法改造車の警察の取り締まりに民間協力している。フォーも香港に戻ってこの仕事を手伝っている青年だ。アマチュアレーサーもやっているのかな? 高校生くらいの二人のかわいい妹がいる。彼女たちは痴漢にあうと兄貴に言いつけて、フォーが怒って痴漢どもを成敗しに来るのだ。いいなぁ、こんな頼もしくて妹想いの兄貴が欲しい…
しかしこの二人の妹、工場大破のパニックに遭遇したり、敵役のクーガーにさらわれたりとそこそこ重要な役どころなのに、名前が不明。多分、フォーたちも「上の妹」「下の妹」といった呼び方をしているようだ。それぞれの個性も薄く、二人も出てきた意味をあまり感じられない。ショートカットの妹はとても可愛いけど。
主人公のフォーはわりと硬派な性格で、真面目で有能、運転の腕もカンフーの腕もピカイチだ。そしてとても家族想い。ゴシップ誌のリポーターである
エイミー(アニタ・ユン)が周囲をうろうろしていても無愛想な顔で相手にせず、「ちょっとは笑ってよ」とか言われたりしている。なかなかカッコよくて好きだな。父ちゃんにとっても自慢の息子だろう(笑)。

ある日、深夜の違法改造車取締りに協力していたフォーは、謎の暴走スカイラインGTRと遭遇した。検問を突破し、警官を跳ねた車の運転手がアメリカから来たクーガーという銃密売組織
(だと思う)のボスだ。フォーはこの車と熾烈なカーチェイスを繰り広げ、逮捕に協力する。
ところがクーガーは拘留された警察署を脱出し、復讐に訪れた。フォーの寝ていた部屋
(コンテナを再利用した感じ)をクレーンで吊り上げて振り回し、父と妹たちのいる部屋へ激突させてきたのだ。家財道具ごとコンテナから振り落とされそうになって必死につかまるフォー、いやもう、さっさと飛び降りた方が楽だと思うんだけど; なんとか工場のベランダに飛び移り、妹たちを助けようとするが、工場の上からコンテナを落とされて大破の下敷きになってしまった。
ええと、この映画、カーアクション以外のスタントや格闘も多い作品だが、全体的にアクションが見づらいという欠点がある。この工場大破の場面や日本のパチンコ屋での格闘シーンなど、アジア版は日本公開版よりも長いのだが、テンポがあまりよくないんだよな。カメラワークが煩雑で何をしているのかわかりにくいし、特にスローモーションの演出がとても多い。この辺りを日本版ではあちこちカットして、スピーディな展開にしているのだ。
元々、サモハンのアクション編集はジャッキー映画に比べてスローモーションにすることが多いのだけど、今回はちょっとやり過ぎかな。この独特の「数秒おきの読み込み」のようなスロー映像は次の監督作の 『ナイスガイ』 でも目立っていたので、この時期のサモハンが気に入って多用していた手法なのかと思う。日本版でカットされていたアクション場面のほとんどがこのスロー映像で、多過ぎてウザったいため、個人的にはカットしてくれている方がテンポがよくて見やすい。
(ちなみにジャッキーが作るアクションシーンは「そこサラッと流していいの?」と思うほどスローが少ない。サモハンとの個性の違いだね;)
格闘シーンでも、日本のパチンコ店での乱闘は、相手役に
澤田氏ロー・ワイコンなどの足技師を揃えているが、演出が今ひとつな印象がある。前半の、工場にやってきたチンピラたちをフォーが一人で追い返す乱闘シーンの方は、結構よくできていると思うんだけど…全体的には回し蹴りの多用など、サモハンらしい振り付けがあるけどね。相手の回し蹴りを上半身屈めてかわしながら反転して回し蹴りを返すなど、ジャッキーには珍しい連続足技の見せ場は見ごたえがあって好きなのだ。

話は戻るが、工場を破壊した後、クーガーは「仙台の国際レースで決着をつけよう」と言って、妹たちを奪っていってしまう。フォーは傷だらけで病院に運び込まれるが、あまりの興奮状態で筋肉が硬直してしまい、医師が鎮静剤を打とうとしても針が腕に刺さらない状態だった。「力を抜いて」と言われても気が高ぶっていて耳に入らない。こういう、肉体的限界に直面した時のリアルな描写って、ジャッキーたちの実体験なのかなという気がして仕方ない。ギリギリまで追い込まれてスタントをした時、肉体が昂ぶってガチガチに固まってしまい、どうしてもクールダウンできなくなることって、きっとあるんだろうね…。
この時、アメリカのFBI からクーガーを追ってきた刑事が来て、クーガーと何か取引をしたのかと尋ねたので、フォーはブチ切れて立ち上がった。
「また俺を利用して奴らを捕まえることしか頭にないのか!」と首を締めんばかりに刑事に掴みかかる。この激しく詰め寄っている場面の奥で、フォーの腕に刺さったままの注射針をなんとか取ろうと何度も手を伸ばしている医者(ユン・ケイ)の演技がちょっと微笑ましい。フォーの動きが止まって呆然とした時にやっと針を抜き、彼が崩れるように倒れてから、改めて鎮静剤を打つのだった。

なんとか動けるようになったフォーは日本の仙台へやってきて、レースに参加することになる。ここで以前三菱自動車で教官だった
ムラカミさん(加山雄三)がレースチームのチーフとして登場するのだが、どういう設定の人物で、なぜフォーのレースをバックアップすることになったのか、説明がなくてよくわからない。予選の合間に、上にも述べたパチンコ屋での乱闘があるのだが、香港にはパチンコ屋ってないんだっけ? 仙台にはパチンコ店の奥にサウナがあるのが普通なのかと思ってしまった。しかも日本ではほとんどの温泉で、刺青をしてる人は入浴お断り なんですよ…(苦笑)
ま、何かと認識間違いの多い「日本」である。
でも、フォーがパチンコ店のお客さんに
「皆さん、これから改装するので出て行ってください」と妙に礼儀正しく日本語で声をかけているところがちょっとツボ。そういえばムラカミさんに対しても「ハイ」という返事の仕方や頭を下げたりという仕草が、日本的礼儀を意識して行っている印象で、ここらへんはジャッキーの日本好きな一面を感じられるね。
本題のカーレースの方は、予選通過をした直後、割り込んできた車と接触してレース車が炎上してしまった。本戦を前に諦めるしかないのか、と愕然と落ち込んでいた当日の朝、冒頭でちょこっと出た「お嬢さん」再登場。「事情はわからないけど、私のチームを使って」と太っ腹にもフォーたちに車からスタッフまですべて貸し出ししてくれる。
ええ? このお嬢さん、いったい何者? ( ^ ^;)
きっと三菱財閥のご令嬢くらいの本物のお嬢様なんだろうな。だってフォーはお嬢さんがなくしたイヤリングを見つけて、その時お嬢さんが閉めた車のドアに手を挟まれたってだけなんだから、そのお礼としてレーシングチームを貸してくれるって……イヤ、持ってるだけでもオカシイけどね。一千万円とかじゃきかないだろ、レーシングチームって。
とにもかくにも、そんなありえない幸運に恵まれて、レース本番に臨むことになる。
レース自体はなかなか迫力があって、フォーの追い上げを頑張れ頑張れと応援してればよい。コース外アウトとかクラッシュとか、アクシデントで脱落する車が多すぎる気はするし、ドライビングテクニックについてまったく言及していないのもどうかとは思うが、そういう専門知識を披露せず、娯楽カーアクションだと割り切って作られた映画なのだろう。下手なルール説明や駆け引きをされるよりは単純でいい。もちろん最後はフォーとクーガーの一騎打ちで、ゴール直前で二台ともコースアウトして、砂利地から早く脱出してゴールを切った方の勝ち、という盛り上がりっぷり。一体、ここで後続の車は何をしているんだろう、というツッコミは置いておいて、砂利を脱出し、ほぼ並んでゴールした二人の写真判定などの展開は個人的にはかなり盛り上がっていた。やった! ジャッキー、勝ったぞ!
ゴールと同時に警察が駆けつけていて、クーガーはそのまま逃走しようとするが、フォーの車は空まで飛んで(笑)、クーガーをとっ捕まえた。妹も無事に助け出されていて、ついでにエイミーともラブラブでハッピーエンド、という筋書きになる。
あ、全然触れていないが、今回のヒロイン、アニタ・ユンとジャッキーの恋愛模様も見どころのひとつだが、個人的にはアニタ・ユンの役柄が気に入らなかった。本作しか見てないが、彼女に演技力があるようには見えないし、どうも美人には見えないけどなぁ…;
(ショートカットの妹の方が可愛い)
日本版ではカットされていたが、アジア版を見るとレース中にまだまだ余計なことをして、フォーを窮地に陥れるというエピソードもあった。
まったく、どこまで面倒な女なんだ。アニタ・ユンが悪いわけではなく、脚本が悪いのだとは思うが、フォーが彼女に惹かれた理由がいまひとつわからないままだった。

トータルでは目新しいものもない本作だが、わりと硬派なジャッキーが見られて、イロモノ好きのKとしてはなかなか気に入っている。香港でのカーチェイスは面白いし、ジャッキーのツナギ姿もカッコイイしね。 『ポリスト』 以来、ジャッキーにツナギは相性のいいアイテムじゃないかと思うわけで、アクションのところも全部ツナギ着てたらよかったのになぁ…( ^ ^ )