ゴールデントリオ大活躍 編 ![]()
スパルタンX サイクロンZ
『プロジェクトA』 でジャッキーと共演したサモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウの二人は、ジャッキーが幼少時代に過ごした京劇学校の仲間たちである。彼らは幼い頃から京劇役者になるため、両親と離れ、厳しい訓練に耐えて、特異な身体能力を身につけた。現在、この学校の卒業生たちの多くが映画界に入り、香港やハリウッドで、裏方として様々な活躍をしているという。
サモハン、ジャッキー、ユンピョウらは、中でも特に役者としてスクリーンに登場し、成功を収めたタイプである。香港での一般認識はどうだか知らないが、日本ではサモがジャッキーの兄貴分、ユンピョウが末弟、といった「カンフー三兄弟」といった捉え方が主流だろう。それぞれの特性などから考えても、単に三羽烏という扱い方をしないで、兄弟分という形で日本に紹介したのは、宣伝会社のうまい戦略だったと思う。(四人いたら四天王になったかもしれないけど。) そのせいもあってか、我々日本人は彼らが「同じ地点にいるクンフー俳優同士」という認識が少なく、最初から順位があり、もともと立ち位置が異なっていたと自然に感じていたような気がする。その後も俳優としての成功度や優劣といった視点でのみ、彼らを比較することが少なかったのではないだろうか。(少なくともKはそうである)
もちろん、彼らが単純に仲良し三人組だったというわけではない。日本に三人で来日して武道館でコンサートを行うなど、チームとして非常に人気が高かった彼らだが、本質的には単独での活動がメインだった。ジャッキーの自伝などを読んだ後に彼らが共演した映画を見ると、威張りんぼのサモと我の強いわがままジャッキーが時々意見を衝突させながら、そして気の優しいユンピョウが二人をなだめて間を取り持ちつつ、映画撮影していた様子などが容易に思い浮かべることができて、なんとなく微笑ましい気持ちになる。長い年月の間に、彼らの関係や、互いに対する感情やなんかも様々に変化しているのだと思われるが、確かなのは彼らが力を合わせ、香港映画の黄金の一時代を築いたということだろう。
彼らはそれぞれ自力で輝く力を持ったスターだったけれど、いざ共演した時、個々の光の強さが反発しあって映画全体のバランスを損わせるようなことはなかった。それは演出やキャラクター設定によるところもあっただろうが、結局、彼らがひとつの作品を作り上げる時に必要な妥協性を、最終的には共有していたように感じられる。なんだかんだと言いながら、完成した作品だけを見れば、三人の個性はちゃんと融合したコラボレーションになっているんじゃないかと思うのである。
その後、彼らはそれぞれの道を模索して歩むこととなったが、今でも時折、同じ映画制作に携わることもある。たまに同じスクリーンに登場したりすると、旧来のファンとしては本当に嬉しくなる。彼ら三人が協力して作った作品群は、今から考えれば贅沢すぎる夢の競演だったということになるのかもしれない。
そんな「七小福」以来の三兄弟、ゴールデントリオの全盛期を振り返ってみたいと思う。
『スパルタンX』 (1984)
【あらすじ】 スペインで暮らすトーマス(ジャッキー)とデビット(ユン・ピョウ)は特殊改造キッチン・カー「スパルタン号」でファーストフード店を営んでいる。ある日、二人はスリをしている美女シルビア(ローラ・フォルネル)と出会い、彼女を更生させようと、アルバイトに雇うことにした。しかし彼女は何者かに狙われていて、私立探偵モビー(サモ・ハン・キンポー)も謎の紳士からシルビアを探すよう依頼を受け、トーマスたちの元を訪れる。攫われた彼女とその母親を助けるため、三人は犯人の住む古城へと決死の侵入を試みるが……
『プロジェクトA』 に続き、ジャッキー、サモハン、ユンピョウのゴールデントリオがメイン共演した作品である。この当時、彼らが大好きだったので、自分の中では非常に評価の高かった一作ではあるのだが…大人になって見ると、物語的な深みなどはあまりないようだね。サモハン特有のユル〜い展開で、ストーリーテリングな要素は少ない。しかし物語を追いかける必要がない分、三人の個性を十分に堪能することができるといえるだろう。映画としての質の高さというよりは、ひたすらにジャッキーやユンピョウの魅力が炸裂している一作だ。ラッキースター・シリーズはオールスターのお祭り映画だったが、この 『スパルタンX』 や 『サイクロンZ』 は彼ら三人のお祭り映画なんだと思う。
物語はトーマスとデビットの朝の風景からのんびりと始まる。起きて早々、二人でカンフー修行だ。映画の冒頭としては気が抜けるほど平凡な形だが、朝っぱらから何げにすごいことをやらかしているジャッキーたち。二人で対戦するところなど、攻撃の型と防御の型をきっちり交互に繰り返してやっているのがわかって面白い。さらに、仕事に出かける際には窓の下にある店のアーケードを利用して、ポンと弾んで飛び降りるシーンがメッチャ好きーvv ユンピョウはまともに落ちて痛そうだったけど(笑)。
さらに平凡な日常、広場でキッチン・カーを広げて仕事を始める風景。彼らの商売道具であるこの車が「キャノンボール」的なハイテク改造車で、日本版題名 『スパルタンX』 はこのキッチン・カーの名前ということになっている。かなりムリヤリな改題だ(苦笑)。ジャッキーはスケートボードで広場をスルスル走り回って、注文をとったり配達をしたりしている。とても楽しそうなシーンで、広東語版のBGMも異国情緒を感じられてなかなかいい。(日本公開版のBGMも好きだけどネ;)
デビットの父親は心の病気で精神科に入院していて、同じ患者仲間のグロリアと恋仲になっている。デビットの実の母とは別れたのか、死別したのかは不明だ。この時、グロリアの娘に一目惚れしたデビットたちだが、夜のストリートガールたちが集う界隈で彼女と再会。お姫様だと思っていた女性が娼婦やスリまでするような女の子だと知るが、追われていた彼女を助けたことがきっかけで、仲良くなっていく。
まず思うことに、この映画、ユンピョウの天然キャラがとても魅力的だ。世間ズレしていない純粋なお人好しで、美人には弱い。女の子に見とれてバケツの水を警官に浴びせかけ、ずぶ濡れの警官を見て、ヘラ〜としながら「雨でも降ってんのか?」と空を見上げているという爆裂な天然っぷりである(笑)。シルビアに対しても一貫して同情的で、騙されても気にすることなく、彼女を助けようと一生懸命だ。いざという時はカッコイイけど、普段はちょっと抜けてるカワイイ弟、といった好感度抜群の役どころといえるだろう。…二枚目なユンピョウ好みのファンにはウケが悪いかもしれないけど;
そしてもう一人、サモハン扮するモビーも絵に描いたようなお間抜け探偵である。アフロに近い、思いきったクシャクシャパーマ頭で、カッコつけたトレンチコート姿でキメてみたり。最初はチャンドラーを真似ているのかと思ったが……黒いスーツの衣装は日本が誇る迷探偵・松田優作扮する「工藤俊作」を模しているのだろうか。 『探偵物語』 が香港でも放送されていたのか、あるいは優作キャラ自体が何か海外の探偵モノのパクリだったんだろうか…?(あまり詳しくない)
とにかく、ハードボイルド姿が全然似合っていないのに、カッコイイと思い込んでカッコつけてるヘボ探偵サモハン、どこまでもお笑い担当に徹する彼のプロ根性に飲杯(ヤンプイ)だ(笑)。
そんな個性豊かな二人に対して、ジャッキー演じるトーマスはちょっと影が薄い、わりと常識人だ。素直で人を疑わないデビットの人の良さに、時々やきもきしているのがお兄ちゃんぽくてなんだかいい。シルビアに対しても好意は持っているが、常識的な警戒心もあり、彼女を家に泊めることに否定的だったりする。彼女が娼婦らしいと知った時も、 「人には人の事情があるさ」 と意外なほどクールな割りきり方をしていた。役柄上、熱血漢で困った人を見ると放っておけない、という印象のあるジャッキーだが、こういう突き放したものの見方をする面も、案外、素の部分で彼の本質かもしれないなぁ、と思ったりする。…ジャッキーが典型的な正義の味方、「ヒーロー」であると思っていたのは子供の頃の思い込みだったんだろう。大人になって見ると、そんな暑苦しいヒーローではなく、本作の役柄の方が人間ぽくて好きだと思っている。
…まぁ、そうは言いながら、根っこの部分ではトーマスも人がいいので、デビットをフォローしているうちに巻き込まれていくという展開になるのだった。
当然ながら、親切心で家に泊めたシルビアにお金を盗まれ、トンズラされたトーマスたちだが、謎の男たちに追われている彼女と再会して助けたことで、シルビアも二人に対して心を開き始めた。前後して、ある紳士から彼女とその母親を探すよう依頼を受けた探偵モビーもトーマスたちに合流し、追われるシルビアを助けて逃げ回る。大活躍のスパルタン号…凱旋門のような街中の広場を走り回っていたのかと思うと、次には広大な自然景色いっぱいの郊外ハイウェイを走っていたりして、「どこまで逃げているんだ」と思うほどですが(笑)。撮影場所にはいろいろ制限があったのだろうが、漫画のようなカーアクションは十分面白い。
そしてモビーの依頼人から、シルビアが死去したロバス伯爵の隠し子であることが語られる。依頼人は伯爵家の執事で、遺言に従ってシルビアに遺産を相続させるために探していたのだが、ロバス伯爵の弟が遺産を独り占めしようと、シルビアを捕らえようとしていたのだった。
結局、シルビアと母のグロリアが誘拐され、トーマスたちは彼女らを助け出すため、伯爵家の古城に侵入することを決意する。
この辺りからの展開が文句なしに面白いのだ。まずジャッキーの衣装がカッコイイ! この映画、主要人物たちの着ている服が全体にカラフルでキレイなんだよな。オシャレと言えるかどうかは微妙だが(時代的な感覚もあるし)、ヒロインのシルビアの色鮮やかな衣装はよく似合ってるし、トーマスやデビットも各場面でいろんな服を着ている。サモハン映画にしては上等じゃないか(笑)。
この古城潜入の場面でも、ジャッキーが珍しくぴったりフィットするタイプのストレッチパンツのようなものを履いていて、足のラインが黒い曲線でメッチャきれいに見えるのだvv 大体カンフー映画はダボッとしたパンツが多いし、ジャッキーもたまにジーンズでアクションしてるだけで珍しく感じるほどなのだが、今回のような伸縮性のある、足の形がはっきり見える衣装は本当にレアですな。
Kは足フェチではないが、昔、絵を描いたりしていたせいもあるのか、男でも女でも、きれいな脚線などを見るとうっとり見てしまう。ラストバトルの時など、「この体勢の、この角度で見た足のラインが超キレイだなぁ〜」と一時停止しながら見てしまうマニアぶりであるw 運動選手ほど太股に筋肉がつき過ぎてもいないし、ふくらはぎがキュッと上がって足首がしまってて、黒い靴まで一体化したラインが理想的。見ているとスケッチしたくてたまらない衝動に駆られる;(←特異体質w) これに黒の指なし皮手袋がまたベストマッチ。カッケぇ〜な〜(笑)
さらに、このパンツの上に着ていた大きめの上着も気に入っている。襟ぐりが大きく開いていて、首元から鎖骨の辺りが白くてきれいで色っぽい。なんか、珍しくジャッキーに色気を感じてドキドキしてしまう; これを脱いでタンクトップになってしまうとそうでもないのに、上着を着ている時だけ、妙に首元に目が行ってしまうという…きっと、Kだけなんだろうけど;;
まぁ、そんな衣装を身に纏いつつ、潜入作戦を実行する三馬鹿トリオ。この時のジャッキーの壁登りシーンはスゴイ! 棒二本を使って軽々と壁を上がっていく様子は、器械体操をしているみたいで超★カッチョエエ〜〜vv
…しかし、せっかく華麗に壁を登ったものの、たまたま飛んできたボールが頭に当たって落下…ゲームオーバー(笑)。
デビットは捕まってしまい、トーマスはモビーと合流して二人で侵入するのだが、この辺りの遣り取りもかなり好きだ。今回、ジャッキーはメインではユンピョウとコンビを組んでいて、二人のシンクロナイズなアクションも十分楽しい。特に最初にベニー・ユキーデらと手合わせした時――この時のアクションもかっこよくて好き――にガツンとやられて、ファイティングポーズを取りつつも、「強いぞ」 「まったくだ」 「よし、逃げよう!」 というツーカーな逃亡シーンもすごく好きなんだけど、なんか、サモハンと喧々諤々しながら協力して闘うという、まったく気の合わないコンビっぷりに無性に魅かれてしまう( ^ ^ )。 何をするにもいちいち口論したり文句を言ったりしているくせに、言葉がない部分ではピタッと息が合っているところがメチャクチャ好きなのだ。先に侵入したモビーが大きなギョロ目でトーマスに合図して、トーマスが正しくそれを理解して行動していたり、逆にトーマスが外にいるモビーのために窓を開けた途端、モビーに蹴っ飛ばされてみたり…。「別々に行動しよう」 と言いながら何故かくっついてしまう、腐れ縁的な関係がツボなんだよなぁ(笑)。
そして最終決戦。ジャッキーのファイティングシーンでも最高傑作といわれるほど有名な、ベニー・ユキーデとのガチンコバトルだ。Kは基本的にリアルファイトをあまり好まないのだけど、それでもこの格闘シーンは息を呑んで見守ってしまう。ユキーデがまた、小さな目に下睫が目立つ、一見優しげな顔つきなのだが、戦うとなったら迫力満点の足技でジャッキーを吹っ飛ばしている。ジャッキーも上着を脱ぎ捨て、足元の置台を蹴り倒して、本気モードに入る。これがまたカッコイイんだ! 食堂での闘いなど、ユキーデがバッと回し蹴りをすると燭台の蝋燭の火が全部消えたりする演出には、背筋がゾクゾクする。相手がかなり強いと悟ったジャッキーは練習と同じスタイルで行こう、と決めて、いったん椅子に腰掛ける。
この時、流れ始める音楽がメチャメチャいい。この映画、日本公開版は英語吹替えバージョンで、主題歌やBGMが香港版(広東語バージョン)とはけっこう異なっている。特にこのファイトシーンで流れるBGMは、英語版音楽を好む人と、広東語版の方が好きな人に分かれる傾向がある。
劇場公開やVHSビデオは英語版だったのだが、テレビで日本語吹替えされた時には、何故か香港版がベースになっていた。このため、当時劇場やビデオで見た人は英語版BGMが原体験となっているが、テレビ吹替で初めて見た人は広東語版BGMがスタートだった。「テレビ吹替えしか見てなかった層」のKは、英語版BGMにあまり思い入れもないせいか、このバトルでは広東語版BGMの方が場面に合っているように思っている。しかし一方、エンディングやスケボーの場面などで挿入されている「スパルタンXのテーマ」(英語版主題歌)は当時のCMでよく耳にした記憶があるし、無条件に好きだと思う。この主題歌は、後に有名なプロレス選手も入場曲として使用していたらしいので、特に男性間で人気が高い曲のようだ。
近年発売されている日本語吹替え入りのDVDやBDでは、新録の吹替え時に英語版のBGMを採用しているので、広東語版と日本語版で見比べると面白いだろう。冒頭の朝のトレーニングのシーンからしてBGMが違う。「おお、英語版BGMだと、このユルい場面も頑張ってトレーニングしてるような、勢いのあるシーンに見えるなぁ」って感じだし、トーマスとデビットが最初にユキーデたちと手合わせする場面での、英語版BGMの入り方はカッコイイ。ラストファイトの時も、この音楽が流れ出すと気分が盛り上がって「それ行け、やっつけろ!」と、熱い戦いの始まりを予感させる。
ただ、個人的にこの場面では、広東語バージョンの音楽の方が好きなだけ。熱い戦いを盛り上げるというより、どちらかといえば静かなテンション。屋敷の中での闘いなのに、風吹きすさぶ荒野で二人だけで闘っている映像が浮かぶような、ピーンと張りつめた緊張感がじわじわ来るような、そんなBGM。英語版BGMが「赤い炎の闘い」のイメージに対し、広東語版は「青白い炎の闘い」かな。好みの問題なので人それぞれでいいと思うが、どちらもいい曲なので、バージョン違いを見比べて楽しんでもらいたい。
で、この音楽が流れてからのジャッキーの闘いっぷりも見事。リラックスして相手との距離をとったり、闘い方にリズムが出ている。数年前の 『ヤングマスター』 の時にはとにかくがむしゃらで、やられてもやられても立ち上がるムチャクチャな体当たり型戦闘方法だったが、あの頃に比べるとこのラストファイトって、全体にスマートで効率的なファイトシーンに進化している。激しい打ち合いに見えて、相手の攻撃をきっちり受け止めてダメージを受けない防御の応酬なんだよな。髪を掴まれて床に叩きつけられた次の瞬間、足払いで相手を蹴り倒して次の攻撃を抑制するといった、息詰まる攻防。完璧な防御の一瞬の隙を突いて蹴りをヒットさせるタイミング! ジャッキーが身体を屈めて回転させながら繰り出す背面蹴りなんて、あんまりフェイントで、何回見ても「おおっ!」とビックリする。何回見ればビックリしなくなるんだ自分 ^ ^ ; こういう風に、計算された殺陣でありながら、本当に予想外に見える反撃方法が凄すぎるのだ。
いや、ヤンマスの長い闘いもそれは凄かったし、ジャッキー映画史上、屈指の名勝負だったことは間違いない。しかし、余計な部分をそぎ落とし、より洗練されたファイトシーンへ劇的に「進化」している本作のバトルは本当に、最高傑作の名にふさわしい。ぜひ見てくれ!!(←もはや誰に言ってるのかわからない興奮ぶり;)
そんなスゴイ闘いを見て大満足なのだが、一方、ユンピョウの闘いのシーンはちょっと満足度が下がる。ジャッキーがリアルファイトだったので、ユンピョウがいつものジャッキー的な、部屋のあらゆる家具を利用した小物アクション・ファイトを魅せてくれる。身軽なユンピョウの逃げ回り方はジャッキー以上に見ごたえがあって面白いのだが、せっかく全米空手チャンピオンという人が相手役なのに、逃げ回った挙げ句に花瓶でぶん殴って倒したのだ。
「ええっ!? ユンピョウ、そこはキミの足技とガチンコ勝負で華麗に倒して欲しかったよ!!」 ……って思ったのは、Kのワガママですか?;;
しかし、サモハンの相手、やたら地黒顔の伯爵がフェンシングの剣でサモハンに挑んでくる。この伯爵のスタントが実はユンピョウだった…らしい。サモハンv.s.ユンピョウで、ユンピョウの華麗なアクションも見られたってことで、ま、いいか…と、自分で自分を納得させてみる(爆)。
ついでにサモハンの加勢に駆けつけたジャッキーとユンピョウ、三人並んで剣を手にして「無敵の三銃士だ!」というシーンは昔見た記憶にもよく残っていて、懐かしかった。伯爵があっさり降参してしまったので、「プロA」のように三人で協力して敵を倒すシーンまではなかったけど、まぁこれ以上の格闘はくどくなってしまうのだろう。
本当にね、なんと言うのか…無条件でこの三人は好きだなぁ。大人になって数十年ぶりに見直してからも、やっぱり自分は彼らと、彼らの関係が好きなんだなと素直に思う。うまく説明できないのだけれど、三人でいる時のジャッキーの肩の力の抜け方というのか、存在感が少しやわらぐ不思議なバランスというのか。
ジャッキーは単独でも強い輝きを放っていたスターだけど、その光の強さをうまく中和し、より魅力を引き出すことに一番成功したのは、やはりサモハンやユンピョウといった、実力も人気も申し分なかったジャッキーの兄弟といえる二人なんだろう。
気取った言葉で言えば、彼らの「絆」がスクリーン上で最高に輝いている作品、と言っていいのではないでしょうかね( ^ ^ )。
『サイクロンZ』 (1988)
【あらすじ】 香港。敏腕弁護士のジャッキー(ジャッキー、役名同じ)は、化学工場からの排水により養魚場が被害を被ったと、民事訴訟で訴えられた華(ファー)の弁護を引き受けることになった。ジャッキーは早速、ブローカーで友人の王(ワン=サモ・ハン・キンポー)に声をかけ、裁判を起こした女社長・イップに接近させ、一方でもう一人の友人、(トン=ユン・ピョウ)に彼女の家に盗聴器を仕掛けてもらい、裁判に向けて情報を収集しようとする。
自身はイップの従妹で水質調査の専門家であるメイと親しくなり、ワンもイップとの仲を進展させていくが、ある夜、メイとイップはジャッキーたちが裁判を有利にするため、自分たちを騙していたことを知ってしまう。彼女たちの信頼を取り戻すため、ファーの工場に潜入したワンは、そこで行われていた麻薬精製の現場に遭遇し、捕まってしまった。
ワンを救うべく、工場へ向かったジャッキーとトンの前に、ファーと屈強な手下たちが立ち塞がる……
『スパルタンX』 に続き、サモハン監督で作られたゴールデントリオ主演作品。 『プロジェクトA2』 で都合がつかず、参加できなかったサモハンとユンピョウが、「時間が空いたから共演しよう!」ってな感じで作った…のかもしれない。香港の旧正月公開に向けて大急ぎで作ったそうで、そういう時間的制約がある場合はサモハン監督にお任せだ。こだわり製作のジャッキーは製作期限を守れないらしいので(苦笑)。
前回のスペイン遠征ほどの時間的余裕はないので、今回は舞台はお手軽に香港。ジャッキーのテーマは「闘う弁護士さん」だ(笑)。メインがスーツ姿で、格闘シーンもほぼスーツでこなしていて、これまでにない新鮮さがある。さらに珍しいのはこの弁護士、善悪の観念では動かないタイプのキャラクターということだろう。裁判に勝つために水面下でいろいろ画策する「ビジネスライクな弁護士」で、「正義の味方の熱血弁護士」さんではない。ここらへんはサモハンちっくで悪くないし、女性と見れば誰でもデートに誘ってみる女好きのプレイボーイ(?)という個性もはっきりしていて、なかなか面白い。ただ、この設定から繰り広げられる物語の展開については、単純に面白かったとは言い難いというのが正直な感想だ。
……うううーん…あくまで好みの問題だとは思う…思うが、サモハンとジャッキーの恋愛模様の泥臭いこと! もうベッッッッタベッタでわざとらしくて、見てる方が気恥ずかしくなってくるほどの薄ら寒さである。
あのさー、Kはサモハンがすごく好きだ。好きだけど、
「サモハン、服装のセンスもギャグのセンスも寒いけど、恋愛演出のセンスも寒すぎるよ…;」
と、ガッカリした自分にガッカリしているんだ。好意を持っている相手と趣味が合わないと知るって、悲しいことだよね。
じゃあ一体サモハンの何が好きなんだ自分。思わず自問自答。やっぱりアクションか?(爆)
元々、恋愛映画も恋愛小説もそれほど好きではないが、サモハンの「誠実に愛すれば誠意は伝わる」みたいなイップ嬢とのやりとりには限りなく嘘臭さを感じた。お互い、最初に好意を持ったと思われる時点でのサモハンの笑顔は腹に一物あるとしか思えないし、街の真ん中で拡声機で愛を告白するわざとらしさに、「こういう男、絶対信用できない」とドン引きした気分になってしまう。
ジャッキーにしても、女性の口説き方の下手さに呆れてしまった。(この手で通用してしまう相手の女性の感性もどうなんだか;)手当たり次第の女性に声をかけても、これでは成功率が低いだろう。実は奥手で真面目な好青年…というより、見ていて喉の辺りが痒くなってくる恥ずかしさである。
もちろん、こういう恋愛演出を好む人もいるだろうが、少なくとも現代女性の感性で「都会的でおしゃれ」でも「朴訥なところが魅力」でもないことは確かだ。それでも相手の女性陣が可愛らしければまだいいが、サモハンの相手は確かに年増だし、ジャッキーの相手は厚化粧で下ぶくれだし(うわー、失礼;)、イヤ多分、有名な女優さんだろうから、彼女たちが美人の部類に入るんだと言われればそれまでだけど…
普段はヒロインといってもそれほど重要視されないので目を瞑ってきたが、ここまで恋愛要素が多くなる話なら、せめてロザムンド・クアンとかマギー・チャンとかブリジット・リンとか、その辺の美女を相手役に据えて欲しかったよ…
そういうわけで、中盤の恋愛エピソードの部分は「見ちゃおれん!」のだけど、それを補うだけの面白さも十二分にある。単純にジャッキーとユンピョウとサモハンが同じ映画に出演しているというだけでも嬉しいのに、きっと当時は夢の対決、彼ら三人の三つ巴のカンフー対決なんてイベントも用意されている。本気の勝敗を決する勝負とまではいかないが、なかなか粋な計らいというべきだろう。
養魚場を女一人で経営しているイップは、どう考えても裏社会的な人物・ファーの工場を操業停止にするための訴訟を起こす。ファーは養魚場の買収を図ろうとするが、民事訴訟の弁護人であるジャッキーが何故かそれに協力して、サモハンに裏工作を依頼する。つまり「彼女を誘惑してそそのかし、養魚場を売らせよう」ってことだ。…それって結婚詐欺なんじゃ…?
まぁ香港の法律で違法になるのか知らないが、すでに弁護士の仕事ではない。ついでに、いくら専門家とはいえ、イップと血縁関係にあるメイの水質鑑定結果が公平な資料として、裁判でどの程度有効なのかとか、被告側はそこを突っ込んで別に専門家を呼んで正攻法で責めた方が話は早いんじゃないかとか、いろいろ思わなくもない。それはさておき、この裁判をベースに物語が進んでいくうち、裏工作のつもりでイップに近付いたサモハン扮するワン、どうも最初っからメイに一目惚れしていたらしいジャッキーらは二人そろって、彼女たちに本気になってしまうのだった。
ミイラ取りがミイラになったきっかけになるほど劇的なエピソードがあったわけではないが、恋に理屈は不要である。順調に恋愛を進めていた彼らの関係をブチ壊してくれる愉快な人物が、ユンピョウ扮するトンという男である。
今回のユンピョウは少々浮世離れした役柄で、ベタ甘の物語の中で非常に面白いアクセントになっている。ジャッキーが最初にトンの部屋を訪れた時、泥棒だと思い込んだトンは、相手の「俺だよ、ジャッキーだって!」という声もロクに聞かないで、ナイフを持って飛び掛ってきた。冷蔵庫の明かりでやっと相手をジャッキーと認めたものの、今度は「静かに! この部屋に誰かいたぞ!」と言い出す。だからそれはジャッキーだって(笑)。この初登場のシーンからしてなんだかおかしなキャラなのだ。
一応、機械に強いという設定のトンの部屋には、面白いものがいっぱいだ。「なんだ、電灯のスイッチを探しているのか?」と押して見せた、巨大すぎる壁のスイッチには笑ってしまった。こういうベタ過ぎるギャグは好きーv。さらに、透明管で飼っている金魚のアイディアもイイ。「何の用だ」と何度も聞くくせに、ジャッキーが繰り返し「盗聴器を仕掛けて欲しいんだ」と説明している時にいきなり金魚について語り出したり、人とのコミュニケーションがメチャクチャなのだ。キテレツな思考回路の変人といった印象で、この時点で 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 の天才変人科学者・ドクにノリが似ていると思った。落ち着きがなく、人の話をちゃんと聞けず、思いつきで行動する。付き合いにくいですなぁ(笑)
ドクは天才過ぎるゆえの変人だったので問題はなかったが、サモハンはこれを精神的な疾病として描いてしまうのが困った点である。トンは自分が世間に必要とされていないんじゃないかとか、いつも心休まる場所がないとか、そんな観念にとらわれて精神科に通っている。心の病気には詳しくないのだが、こういうのは今で言うと妄想性人格障害とか、その辺りに分類されるのだろうか。(注※ 彼が病院へ通っているというエピソードはビデオ版のみ。DVD版では収録されておらず、すべてカットされているため、DVDで見るとユンピョウの行動はとても唐突で意味不明に感じるだろう。本当は、彼の一連の行動にはちゃんと流れがあるのに…;)
トンはその特異なキャラで物語を引っ掻き回す。メイを夕食に招待しているジャッキーの家の窓から忍び込んできて、忙しいジャッキーにわけのわからない質問を繰り返したりするのだ。捲し立てるトンの口上をぽかんとして聞いているジャッキーの表情がいい(笑)。そこへワンも勝手に家に入ってきて、ジャッキーがなんとかメイからワンを隠そうとしたり、トンとワンが隠れた部屋で鉢合わせをしてケンカを始めたり、ジャッキーがメイの前に現れるたびに顔に痣ができたり鼻血が出てたり、そんなコメディシーンは何回見ても可笑しくて笑ってしまう。今回、コミカルな部分はかなりテンポよく仕上がっていて、この三人でケンカをするシーンなどは特に面白いと思う。
で、依頼主のファーとは初対面で挨拶していただけなのに、たまたまやってきたファーの対立組織の連中と酒場で大乱闘してみたり、船上レストランでデート中に襲撃を受けたり、弁護士の仕事じゃないどころか、巻き込まれている理由も不明だったりする展開もある。酒場での乱闘はおっと、 『プロA2』 の悪ボスのデビッド・ラムなんてちょろっと登場しているが、サモハンに投げ飛ばされて退場。もちろんディック・ウェイとかフォン・ハック・オンなんて、もの覚えの悪いKでもいい加減顔を覚えてしまったお馴染みの面子が顔を出している。酒場の乱闘の際、ジャッキーはサモハンたちと比べてそれほど飛び抜けたことをしていないのに、この後ジャッキーだけ狙われて襲撃されたりするのだった。船上レストランでの格闘はかなり面白かったけどねー( ^ ^ )
そんなこんなで、トンのぶっとんだ行動により、イップやメイはジャッキーたちの最初の計画を知ってしまう。それまでなんとかトンに理解を示し、ワンとトンのケンカを諌めていたジャッキーだが、メイにフラれてワンにどつかれ、ついにブチ切れて路上で三人が大ゲンカ。この三つ巴の演出はよくできていると思う。複雑に入り組んでいるのにスピーディーで無駄がなく、ユンピョウの脚払いの鋭さとか、ジャッキーとサモハンがお互い殴ろうとして同時に防御に入ろうとわたわたしてたりとか、さすが幼馴染み、息の合いかたが絶妙だ。そんな中でもやっぱり一番おいしいと言うか、殴られてないのがサモだっていうのがちょっと笑えるんだけど(笑)。個人的にはすごく好きなシーンだ。
その後、ワンはファーの工場に潜入し、この工場で麻薬の精製をしていた事実を突き止めるが、悪人どもに見つかって捕らえられ、麻薬を打たれてしまう。ここで登場するのが 『スパルタンX』 でジャッキーと歴史に残る名勝負を演じたベニー・ユキーデだ。今回は眉毛が薄くて目の縁取りがメチャクチャ不気味な、工場の一社員らしい。以前に比べてずいぶん太ってしまったが、ガタイの大きくなった分、迫力が増して、「スパルタン」の時より強そうに見えるよ( ^ ^;)
一方、ジャッキーは裁判の席でメイに愛を告白するという、寒すぎて笑いにもできない一幕を演じた後、当事者同士の意向をまったく無視した和解でさっさと裁判を終わらせる。裁判劇としてはグダグダなので、「ポリスト」のような緊張感ある場面は全く見られない。メイと元の鞘に収まったが、コメディリリーフにもなれなかったジャッキーの秘書がちょっと気の毒だ…
そこへトンが来て、ワンがファーの工場に忍び込んでから出てこないことを告げる。ジャッキーはトンとメイと共に工場へと乗り込んでいく。
言い忘れたが、ファーを演じるのは元華(ユン・ワー)、サモハンやユンピョウと同じく、ジャッキーの京劇学校の仲間だ。今のところ出演作はほとんど未見で、近年になっての 『カンフーハッスル』 の大家さんの強烈なイメージしかないのだが、この 『サイクロンZ』 でもかなり個性的な役柄だ。巨大な葉巻をプカプカふかしながら、ユキーデとタイマン勝負のジャッキーに、後ろから攻撃を仕掛けるという反則卑怯技を使う。そのくせボスらしからぬ猿のような身のこなしで、外見とのギャップが面白くて印象に残る。
ファーはジャッキーにとって依頼人なのだが、裁判が終わってしまえば義理はないのか、キョンシーのように蒼白な顔のワンを見た途端、ジャッキーはファーの手下たちを相手に闘い始める。銃を抜いた手下たちに、とっさにトンが手を抑えて蹴り飛ばすのを、ジャッキーが横からうまく攻撃を加えてサポートしている。さりげなくツーカーなコンビネーションが個人的にポイント高しv
ラストバトルはまずユンピョウの見せ場がいっぱいだ。 『スパルタンX』 ではちょっと物足りなかったが、今回は狭い工場の通路や梁の上など、狭い場所で驚くほどのジャンプ力を披露している。この身体の柔らかいバランス感覚というか、空中での位置取りというか、そういうところでは抜群の運動神経だよなぁ、ユンピョウ。鉄の梁の上でかました側転にはびっくりしたよ。身軽である分、攻撃の破壊力に欠けるのは確かだが、細身に合う黒いシャツにジーンズといういでたちもカッコイイし、彼の長所を惜しみなく発揮してくれる。このままユキーデとも一気に決着をつけるのか!? と思ったのだが、ユキーデの蹴りを一発食らってノックアウト。そこはジャッキーに譲ったようです(苦笑)。
アクションシーンの演出をサモハンがしているのかどうかわからないけど、こっちのセンスは本当に見事だと思うんだ。ガラスに映ったユンピョウと対戦相手が並ぶ一瞬のハッとするカメラワークとか、割れたガラス窓の向こうから彼らの格闘を横に流して見せる演出だとか、かなり深い計算があると思うんだ。凝りすぎるとあざとく感じるけど、シンプルに、的確に、だけど計算しつくした演出のセンスが一瞬光る、という感じかな。殺陣とか、すごい技を振り付けることも大事だけど、それを最大限に魅せきる映像の創造力も絶対必要だ。こういった技術の高度さを目の当たりにすると……やっぱりサモハンって凄いよなぁ、と自分の中で彼の評価がうなぎのぼりになるのである。(上がったり下がったり、忙しいよ/笑)
それはもちろん、ジャッキーとユキーデの闘いにもいえることだ。ユキーデの不気味で静かな迫力はもちろんだが、二人が対峙し、服を脱いで戦闘体勢に入る仕草のひとつひとつが、確実に緊張感を高め、ゆっくりしたテンポの中で「始まるぞ!」という期待をメチャクチャ盛り上げていく。そして、いざ始まった時のスピード感やインパクトは、そこまで高まった期待を決して裏切らない。これを最小限のカメラワークや、役者のポテンシャルだけで演出してしまうのがスゴイのだ。
ジャッキーの鼻血ひとつの傷すら、流れ出すシーン、それを自分のシャツで拭うシーンなど、闘争本能の表現方法がうまいと思うし、闘いの合間に挿入される、ジャッキーとユキーデのそれぞれにカメラが寄るカメラ割りとか、不意に見せるコミカルな息抜きとか、緩急の付け方なんかも憎らしいくらいいいトコを突いている。そういう部分ではもう確かに、見事なセンスだと素直に感動してしまうのである。
『スパルタンX』 に比べると知名度や評価の少ない対戦カードなんだけど、見ごたえは充分。ジャッキーの本気モードのリアルファイトが見られる名勝負です。Kはすっごく気に入ってしまってるんだけどね。
この作品はこういうジャッキーのファイティングシーンの他にも、ユンピョウのアクションとか、ゴールデントリオの三つ巴戦とか、さりげなくユン・ワーも(裏方でなく)参加してたりとか、本当にサービス満点で、絶対見て損はしない豪華映画だと太鼓判を押しておく。ジャッキーは相変わらず主役然としてるし、ユンピョウは一番カッコイイというかおいしいトコどりで、そういう意味では「もうホントに絶対面白い!」と絶賛しているのだけど、物語の半分の部分がねぇ…残念なことに自分の感性に合わなかったために、自分の中ですら、感想が両極端に割れてしまうのだった。
ついでに、製作光景の映像を見ると、NGシーンではジャッキーもサモハンも何度も吹きだして笑い転げていて、「ホントに仲悪かったのか?」と不思議な気がする。逆にこんだけ楽しそうにNG出してて、製作がよく間に合ったなぁ、とか(笑)。
まぁどんな形であれ、これが現在のところ、ゴールデントリオが登場した最後の作品。今となっては貴重なので、DVDでもなんでもいいから、永久保存版として残されていけばいいのに…と、切に願うものなのである…。
〜 ゴールデントリオ大活躍編・終了 〜