人間ドラマ重視編 ![]()
ファースト・ミッション 奇蹟/ミラクル 新ポリスストーリー
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『ファースト・ミッション』 (1985)
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『奇蹟/ミラクル』 (1989)
【あらすじ】 1930年代、香港。広東からやってきたばかりのコウ(ジャッキー)は詐欺にあって手持ちの金をすべて騙し取られ、悄然としているところをバラ売りのカオ夫人に出会う。直後にマフィア同士の抗争に巻き込まれ、ボスの死に立ち会ったことで、新しいボスに祭り上げられてしまった。敵対組織との抗争やナイトクラブの経営といった日々に追われながらも、コウはいつもお守りとして夫人から幸運のバラを買うようになる。
しかしある日、カオ夫人の一人娘が富豪の息子と結婚することになり、彼女に会いに香港にやってくることになった。娘も結婚相手も、母親を金持ちの夫人だと思い込んでいるため、しがない花売りの娘だと知れれば破談にもなりかねない。コウは恋人のルーミンたちと協力して、彼女を富豪の貴婦人に仕立て上げるための作戦に乗り出すが……。
日本公開当時、よく聞いていた映画紹介のラジオ番組で、DJが本作を紹介して 「ジャッキーも大人になろうとしているようだが、まだ早いんじゃないか。もっとやんちゃなジャッキーでいていいのに」 と語ったことを今でも覚えている。一部ではそこそこ評価されたようだが、公開時点ではそれほど人気がなかった作品…という印象がある。ジャッキーが映画批評に刺激を受けて、文芸作品っぽいものを目指して作ったという話も聞くが、自分も含め、日本人ファンは当時、まだジャッキーにそういうものを求めていなかったのだろう。もっと楽しいジャッキーが見たかった時代だったのだ。
しかし現在、この作品はジャッキーファンの間で非常に人気が高いようだ。自分の記憶と現在の人気度にギャップがあったのでちょっと驚いたが、多分、後年になって評価が上がってきた部分はあるのだろう。ジャッキーアクションだけを求めていたファンの方が、後から成熟してきたというのか。ちなみにジャッキー自身の一番のお気に入り作でもあるらしい。
大人になって、改めて見てみた 『奇蹟』 だが、今回のジャッキーブームのわりと初期にビデオを買ってきて見たせいもあって、最初は途中で中だるみしてしまった。いかにも香港らしいというか、香港風コメディのテンポに馴れていなかったため、スピーディーなジャッキーアクションを見たい!という自分のテンションと合わなかったのだ。
というか、実を言うとこういう「嘘に嘘を塗り固めていく」タイプの物語は、見ているうちに面倒くさくなるという好みの問題がある。
「もうバラしちゃえばいいじゃん。騙し続けるなんて絶対無理だって。大体、今後も家族づきあいしなきゃいけないのに、今だけそんな嘘ついてどーするのよ」と、大変現実的な思考回路を持ち込んでしまうので、多分根っこの部分から物語に入れていないのだ。こればっかりは誰のせいでもなく、気質によるものなのでどうしようもないですけど;
カオ夫人のついた嘘を本当にしようと、コウたちは付け焼刃で舞台を整えるのだが、娘の婚約相手のクー父子の友人たちや新聞記者を誘拐したり、ニセ株発行の話を持ち出したり、しまいに香港の名士たちを呼んで婚約パーティをしようという話にまで発展し、もうてんやわんや。 『スティング』 調の音楽やテンポの物語で、普段のジャッキー映画に比べてもストーリーの展開がのんびりしている。もちろん、この緩いテンポがこの映画の絶妙の味であることは疑いようがないのだが。
それが物語の終盤、ジャッキーの息をもつかせぬ連続アクションがあり、ラストで起死回生の「奇蹟」が起こる。不覚にもほろりと涙ぐんでしまい、「しまった、嵌められた」と思ってしまったじゃないか(笑)。途中の冗長さがラストの爽やかな余韻に繋がっているようで、なんだこの香港マジックは? 結局最後には「なんだよ畜生、いい映画だったなぁ!」という、気持ちのいい印象が残ったのである。
その後、いろんなジャッキー映画や香港映画を見たし、この 『奇蹟』 も何度か見直している。今も見ていて「ユルいなぁ」と感じる部分はあるものの、一本の映画としてのまとまりや爽快感などは他のジャッキー映画に勝っていると思うし、自分の中で少し違う「好き」のジャンルに入っている作品である。
さて、ジャッキー演じるコウは素直な好青年で、大陸から仕事を求めて香港に渡ってきた。珍しく生粋の香港人ではないんだね。まったく通りがかりに組織のボスを押し付けられてしまったが、生来の機転の速さと、意外と度胸も座っている面もあって、教育係のようにくっついている秘書役?の午馬(ウー・マ)にいろいろ教えられながらボスの仕事を頑張っている。このウーマが組織の中で元々どういう役割で、コウの腹心になったのかよくわからないが、飄々としてトボけたツッコミを入れてくるなかなか面白いキャラだ。影ながら常にコウを支え、まずコウにさせて、ダメなら代わりにやって見せるようなシーンもあり、成長を見守っている父親のような雰囲気。ウーマはいろいろな香港映画で顔を見てきて、役者として(監督としても)そんなに好きではないが、本作の役柄はとても魅力的だと思う( ^ ^ )。
そしてヒロインのヤン・ルーミンを演じるのはアニタ・ムイ。ジャッキー映画でも 『酔拳2』 『レッド・ブロンクス』 などに出演し、よく知られているが、この映画で初めて見た時は失礼ながら「美人じゃない顔だなぁ」(←表現控えめ)と、ヒロインという役が信じられなかった。最初はただの脇役かと思っていたのに、突然コウと痴話ゲンカを始めたので驚いたくらいだ。いつの間にキミたち、そんな親密な関係に…? ていうか、これがヒロイン…?
しかし後に理解したことだが、彼女はシリアスもコメディも見事にこなせる非常にキャパの広い女優で、歌手としても実績を残している。今となっちゃー相当に好きな香港女優さんである(残念ながら故人ですが)。特に 『ファイトバック・トゥ・スクール3』 などでは、彼女の魅力が存分に堪能できるだろう。主役のチャウ・シンチーの影が薄いくらいだ。
このルーミンに頭が上がらず、教育係のウーマにも世話を焼かれ、ちっともボスらしくないコウである。どこかに行く時には必ず幸運のバラを買って胸に挿す。車が爆破したり照明が落っこちてきたりしても、バラを持っていたから助かったんだと思っているらしい。バラが買えないならどこにも行かないと、こればっかりはワガママを押し通す。いわゆる縁起担ぎなのだろうが、毎回時間がないからと説得するウーマも、事前にバラくらい買って用意しとけばいいのに…(笑)。
そんな幸運のバラを売ってくれるカオ未亡人は、貧しい生活を切り詰めて、一人娘を上海に留学させている。実の娘(グロリア・イップ)がどうして母親の境遇を知らないのか知らないが、再婚相手の義理の父親がお金持ちだから、母親も裕福に暮らしていると思っているらしい。娘のお相手は上海の名士クー氏の息子で、結婚の話をまとめるために香港に来るというのだ。カオ夫人はすっかり途方に暮れ、事情を聞いたコウたちはルーミンのお節介に巻き込まれる形で、夫人の嘘に協力することになるのだった。
夫人の夫役でこの騒動に参加するトン・ピョウや、彼を紹介する家政婦役の元ホテルマンのおっちゃんもそれぞれ味のある存在感。そしてクルーゾー警部風のおトボケ警部・ホー(リチャード・ン)、ジャッキー映画ではサモハンがらみでよく見かけるのだが、意外とジャッキー自身との絡みは少ない気がするので、今回は新鮮な気分で見られる。なんというか、こういう名役者たちが続々と集っているのに、ただのオールスター映画になっていないところが渋いというか、「知る人ぞ知る」な楽しみがあるのだ。この映画、香港映画とか他のジャッキー映画をあまり知らないで見るより、少し知識をつけてから見るとまた奥が深いなと感じる。
そしてジャッキーのアクション。帽子を使ったちょっとしたコネタがまず嬉しい。遊び半分に見える帽子の被り方や弄び方が小粋でいいんだよね。カンフーは全体的には少なめで、特に中盤は物語を優先させているために小出しな感じがする。でも敵対組織のタイガーと会談するために訪れたレストランでのひと騒動などは、 『プロA』 を思い出させるような、古典的ながらじっくりと作り込まれたアクションで、非常にいいと思う。アクションの質が映画の雰囲気にぴったり合っているというのか。しかも驚異的な身体技(笑)。
そして終盤になって、単独で警察のホー部長に掛け合おうとするコウの孤軍奮闘の活躍はとにかくすごい。まず市場を駆けずり回ってタイガーの手下たちと闘う場面、ジャッキー得意の小物使用アクションで、人力車をシーソーのようにしたり幌を使ったり、秀逸なアイディア満載だ。ただジャッキー、大怪我したみたいだけど、大丈夫?;
結局捕まってしまったコウは、タイガーの前に引きずり出されて銃で撃たれそうになる。必死に誤解だと叫ぶジャッキーの声がなかなか臨場感を盛り上げる。この時の照明の使い方が綺麗だなv すんでのところで誤解は解けたが、今度は手下のフェイが製糸工場かなんかの工員たちをけしかけ、今度は立体的アクションの王道だ。ウエスタン調の軽快なBGMに乗り、ジャッキーが走る、飛ぶ、登るわ落ちるわひっくり返るわ。相手にしているのがあくまで絶対的な「敵」ではないので、血も出ないし死人も出ない、リアルさというよりはコミカルで絶妙のタイミングを楽しめるものだ。あー、Kはやっぱりこういうアクションが一番好きだなぁ。物語の長さの比率としてはアクションシーンは少ないかもしれないけど、充分に見ごたえのある中身の濃い内容で、なんかすっごく満足できます。
そうして、裏でいろいろ画策していた部下のフェイに罪は問わず、懐の深さを見せつつ、タイガーとも和解したコウ。このタイガー、最初はおっかない顔していたのにえらく豪快に笑うおっさんで、松方弘樹を連想させる(笑)。実はコワモテの悪役専門らしいが、本作では「ノープロブレム!」と愉快に愛敬を振りまいて終了してくれましたよ。
結局、根っからの悪人が一人もいなかったというのがこの物語のミラクルで、すべてが大団円に収まる。ホー部長が船から最後に手を振るシーンもニヤリとさせられる。深刻さも、見終わった後に残るしこりのようなものもなく、ほのぼのした暖かい気持ちになるのだ。人の善意ってモノをもう一度信じてみようかな、という気分にさせてくれる。
きっと、発表当時は(日本では)時代が早すぎたかもしれないけど、今にしてみれば、とても素敵な作品だといっていいと思います。ファン間で人気が高いのも頷けますよ( ^ ^ )。
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『新ポリスストーリー』 (1993)
ポリスストーリーが多すぎて混乱気味だが、これは 『香港国際警察』 シリーズとは別モノ。原題は 『重案組』 、英題は 『CRAME STORY』 となる。…実際、ジャッキー再ブームの初期にDVDで 『香港国際警察』 (2005)をポリスストーリー(1985)だと思って買い、「あれ、NEW POLICE STORYって最近のやつか。間違えた」と保留にし、 『新ポリスストーリー』 を「見たことないかも…」とレンタルしてくると、これにも「New Police Story」とか書いてあったので、「同じものを借りてきたか?」とドキドキしながら見始めたという経緯がある。今でこそ区別がつくようになったが、初期はかなりごっちゃになっていたのです(笑)。
物語は実際に香港で起こった誘拐事件を題材にした、シリアスでハードな刑事サスペンスだ。
香港警察特捜班のエディ・チェン刑事(ジャッキー)は日々の警察の仕事に極度の緊張とストレスを感じながらも、職務を忠実に務めようと凶悪犯と闘っている。ある日、香港のやり手実業家・ウォンが誘拐され、莫大な身代金が要求される。チェンは犯人の手掛かりを求めて台湾へ飛ぶが、そこで先輩刑事のホン(ケント・チェン)の行動に疑惑を抱く。実はホンこそが誘拐事件の黒幕だった……
と、いった内容で、全体的に流れる雰囲気はシリアスで重い。全体にリアリティ色の強い演出なのだが、香港ノワールに代表されるような、流血や暴力といった意味での香港的な「やり過ぎ」感のリアルさは抑えられている。一方で、アクションシーンなどは映像的な見栄えを優先させていて、テンポのいい上質なサスペンス・アクションに仕上がっていると言えるだろう。
基本的には物語の展開が重視されているため、登場人物もそれに合わせて作り込まれていて、演じるジャッキーも個のキャラ性を抑えている感じだ。特に前半、負の要素を強く持つ主人公をじっくり見せている部分は、普段は目立たない演技力の高さを伺わせる。後半はむしろ「ポリスト2」などで孤軍奮闘するジャッキーに非常に近いのだが、前半のキャラ付けがしっかりしているので、類似性をほとんど感じさせない。有名俳優にはありがちな弊害だが、「成龍」のスター性を残しながら俳優としての演技を見せるってのは、バランスがなかなか難しいんだよな。本作はその辺りもうまく調整していて、いろんな意味で監督のセンスがいいなぁと感じられる一作だが、まぁ好みにより、賛否両論に別れる部分がありそうだ。
さて、ストーリーは眉間に皺を寄せたジャッキーが、陸軍病院の精神科でカウンセリングを受けるシーンから始まる。二日前に起こったギャング団との銃撃の緊張から今だ解放されないチェン刑事、女性カウンセラー(けっこう美女v)に触れられただけでびくっとしている。カウンセラーは休暇を取るよう勧めるが、チェンは「そんなことはしていられない」と仕事に戻ってしまう。ストレスで胃に穴が開くんじゃないかと心配です;
その頃、「誘拐されるかもしれない」という疑惑にかられて、警察に保護を求めてきたビジネスマンがいる。ウォンというこの男、ワンマンで身勝手で、労働者に賃金を支払わなかったり、いかにも実業家という感じでやな奴だ。警察に保護を求める時も、「高い税金を払っているんだから、警察が市民を守るのは当然だ」みたいなことを言っている。こんな奴が誘拐されて殺されても、観客としてはそれほど同情しないところだが、そんな好感度の薄い人間を助け出すのが最大任務になっているところが、この物語のリアリティなのだ。人質を哀れな善人にしていないところがクールでいい。実業家なんて実際、こんな傲慢な奴が多いだろう。それでも奥さんから見れば愛する旦那だし、法を犯していない市民である以上、警察官は救出に全力を傾けるのだ。
関連して、依頼を受けてウォン氏の護衛を始めたチェンたち特捜班が、労働者の暴動に発展しそうな騒ぎを諌めていくエピソードもよくできている。「香港は法治国家だ、法律に乗っ取ってデモの申請をすれば警護してやる」というチェンの説得も的を得ていて、実際の誘拐事件の不幸な顛末、香港警察の汚職、台湾警察との確執など、物語全体のテーマにきちんと融合していて、製作者側の明確な問題提示があると思う。
しかし、チェンたちがウォン氏から離れた隙に誘拐事件が起こる。駆けつけたチェンは誘拐車を追走するが、車をひっくり返されてしまった。チェンが倒れた車を一生懸命起こしたり、車内から携帯電話を探して電話をするところなど、いつもの超人チックなジャッキーらしくなく、微妙にリアルな演出をしているのがとても新鮮だ。個人的に特に気に入っているのが、起こした車で再び敵を追走するところ。額が切れて血が流れてくるのが目に入ってくるため、ペットボトルの水を額に浴びて血を洗い流すのだ。なんか妙に現実的で、地に足が着いたアクションとでもいうのかな。
通報で駆けつけた二台の白バイも、誘拐犯の卑劣な運転で跳ね飛ばされてしまう。轢かれそうになった警官を助けようと車を間に突っ込むチェン。倒れた警官のヘルメットを外すと血が滴り落ちるところなども、生々しくて「うわぁ…w」と思ってしまう。頭部に重症を負った警官を抱え、チェンは白バイを駆って病院へと疾走していくのだ。
このシーン、DVDなら日本語吹替え版でぜひ見て欲しい。香港の街をバックに、応援に駆けつけた白バイ警官たちが追走し、先頭を走っていくジャッキーの姿とメインテーマ音楽が重なって、とてもかっこいい。広東語版の時もBGMは流れているんだけど、吹替えはこの場面の時にBGMのボリュームがぐっと上がって、なんだか圧倒される。この映画で一番印象に残る名シーンと言ってもいいだろう。グッジョブ!(笑)
そして陸軍病院に警官を運び込み、「早く助けてくれ」と訴えるチェンは、大丈夫だから君も手当てを、となだめられても興奮して話を聞ける状態ではない。この激しい興奮状態というのは、 『デッドヒート』 などでも見られる、なかなかリアルな表現だと思う。こういう肉体を酷使せざるを得ない状況において、通常にあり得る精神的な緊張感から完全に一線を越えた状態になるというのかね。そしてブツッと糸が切れたように、突然意識を失ってしまう。
切れた額の手当てしている最中に、チェンはまた飛び起きて、また治療室に運び込まれた警官のところへ向かおうとする。もう行ったって自分には何もできないのだが、額の傷を縫っている途中の針と糸が目の上にぶら下がっている状態で、ギラギラとした表情で医者たちを寄せ付けない。鬼気迫る迫力だ。この映画、数えるほどの数シーンで主人公たちの表情にカメラがぐっと寄って、アップによる表現が効果的に使われている。一方で、香港の高層ビル群とか下町的な風景など、遠景としてのカメラワークなどもうまく、香港という街の特徴をとてもよく映像に収めていると思う。
結局、二人の白バイ警官のうち、一人は助からなかった。血まみれのシャツ姿のまま、うちひしがれるチェンの姿に、一緒になって泣きそうになってしまったよ…
と、ここまで出てきた美人のカウンセラーとか、チェンが抱えていたストレスやなんかがその後、物語に大きな影響を及ぼさなかったのがなんとも惜しい。トータル的に見れば、この物語は誘拐事件を通してチェン刑事が自身の再生を行うというところなのだが、ここまで深刻な心理状態に陥っている普通の人間が、あんなすごいアクションをこなし、事件解決と同時に普通に立ち直っているような形で終わってしまうのは、少し消化不良な感じではある。まぁ、そのままいくと相当暗い話になるし、そんなに暗いのは見たかないけど、葛藤→絶望→自分の生き方の再確認、という彼個人のアイデンティティの流れをもう少し丁寧に見せて欲しかったなぁ。
(女性カウンセラーに至ってはここで出番終了。再見するまで存在すら忘れ果てていた;)
その後、犯人の手掛かりを求めて台湾に飛んだチェンは、先輩刑事のホンの行動に不審を抱く。このホンを演じるケント・チェン、コメディ役などをやらせるとトボけていて面白いのだが、今回は警察の捜査に参加しながら、陰で手下たちに指示を与えて捜査を撹乱する一番の悪役だ。太った外見といい、ふてぶてしい物の言い方といい、もう本当に嫌味な悪役でナイスチョイス。悪役がいかに悪役たるかで物語の成功度は高くなるものだv
チェンはホンの周辺を調べ始めたが、敵はあちこちにスパイを置いているので、次々に邪魔が入って思うように行かない。ようやくホンの情報屋を逮捕して連行してきたチェン、開き直って暴れるこの男をこらしめる場面はちょっと爽快だ。特捜班の仲間たちというのが個々としてほとんど出てこないのだが、実はいい同僚に恵まれているっぽい。チェンは特捜班の班長、くらいの位置づけらしく、「俺と勝負しろ!」という男の挑発に対して、腰に携帯している銃や手帳を外すチェンの行動を、部下たちが信頼して見守っている様子が窺われる。まぁ、ちょっと派手にやりすぎかなって気もするけど、ジャッキーなので許す(笑)。
ホンが慌てて「俺の情報屋だから俺が取り調べる」と言ってきても、チェンは仲間たちに命じて絶対に渡そうとしなかった。この情報屋のエピソードもここだけで、逮捕したことによる事件の進展などの筋に全然絡まなかったのが、残念なところだ。
で、誘拐犯が潜伏していたらしい廃船が発見され、調べていたチェンは、ここでついにホンが誘拐犯の一味であると確信を持つに至る。しかし、ホンの卑怯な手段により、船のエンジンだか煙突だかの穴の中に突き落とされ、出口のない船底に閉じ込められてしまった。
チェンが脱出を試みている間に、ホンはウォン夫人に接近して身代金を払わせ、姿をくらます。チェンはそれを知って愕然とする。身代金を払ってしまっては、犯人と接触する手掛かりを失ってしまい、ウォン氏も死体となって帰ってくるだけだ。
それでも、チェンは廃船内で見つけたレシートを頼りにコンビニを張り込み、誘拐犯たちを追う。(この雑然とした香港の下街風景なんかも雰囲気が出ていてとても好き) ここで激しい格闘と銃撃戦、そしてガス漏れが発生して、住居ひしめくビル街のあちこちで大爆発が起こるのだった。
火事の中、犯人を追い詰めついに捕らえたが、ホンはふてぶてしく人質の隠し場所を言おうとしない。チェンはホンを連れて脱出を優先しようとするが、逃げ遅れた子供を見つけて救出に向かった。その隙に逃げようとしたホンは崩れた瓦礫の下敷きになってしまい、チェンは子供と動けなくなったホンのどちらを助けるか、選択を迫られる。
ホンに対して警察官の恥だと激怒しながらも、必死に彼を助け起こそうとするチェンに、ホンは「なぜ俺を助けようとする」と問う。「俺の生き方なんだ!」と答えるチェンの言葉が、前半の苦悩に繋がってくるわけだ。警官として市民を守り、共に戦う仲間たちを愛し、決して見返りを求めずひたすら正義のために戦うことが、自分の使命なんだと再認識したのである。
どんなに迷っても葛藤しても、こんな風にしか生きられない不器用な自分を受け入れるしかない。そういう一種の開き直りというか、諦めがつくと、人間って強くなれると思う。チェン刑事というキャラクターのそういった自己再生が物語のひとつのテーマでもあるが、途中経過があまり前面に押し出されなかったので、わかりにくくなったのが惜しいところではある。もう一歩ジャッキーが汚れ役をやれたらなぁ…って気もするが、この時点ではこれで精一杯かな。
結局、チェンはホンを助けることができず、子供を連れて脱出する。ホンは最後に人質の居場所を告げ、連絡を受けた中国警察が海上の犯人を逮捕、ウォン氏も救出することができた。中国本土から香港警察へ、彼が引き渡されて戻ってくる国境地帯がラストシーンになる。
長い誘拐生活でウォン氏も人が変わり、香港から出て静かに暮らそうと夫人と誓い合う。無事に誘拐事件は解決したが、もちろん、チェンの心がそれで完全に救われたわけではない。夫人に感謝の意を伝えられても、ちょっと悲しそうなチェン刑事、助けられなかったホン刑事や、失われた多くの仲間たちのことを悼みながら、彼はまた次の事件に踏み出していくのだ。どこか悲哀を感じる彼の背中である。
きっと、正義のために頑張っているたくさんの名もない警察官たちに、監督やジャッキーのエールが込められているのだろうなと思う。アジアで発生する誘拐事件のうち、人質が殺されるケースは少なくない。そんな痛ましい事件や、関連して死傷する多くの警察官たちに対する畏敬の念、なのだろう。
恒例のNGシーンもなく、ジャッキーの笑顔もない。物語のテーマ自体は重く、リアリズムの追求はしているが、エンターティメントとしての明快さもきちんとしている。メリハリのきいた面白さはなかなかの佳作だと思う。ただ、カーアクションや爆発のシーンなど、とても派手な演出なのに、ジャッキー映画特有の明るさがないせいか、あんまり派手に金をかけているような印象が残らないのが不思議というか、気の毒なところだね(苦笑)。
個人的には普段見られないジャッキーを堪能できて、とてもとても気に入っている。ジャッキーもさっぱりした髪型とか、都会的でスーツが似合っていて、カッコよくて好き〜v (暴れるとせっかくセットした髪もすぐ乱れちゃうのが惜しいぜ!/笑) この監督ね、顔はいかつい悪役顔のおっちゃんのくせに、監督としてはセンスがあるじゃないか〜とか思うわけで(爆)。
ただ、苦悩するジャッキーなんて見たくない〜! 痛快アクションが見たいんだ〜!!
と、いうファンの人にとっては、あまり受けがよくないかもしれない。そこは好き好きってことで、ご了承あれxx。