次元と不二子の関係について 


レンタルショップで「ルパン三世」の古いCDを借りてきた。
何気なく歌詞カードを見ると、登場人物の紹介がある。次元の項にはなかなか興味深いコメントがあったが、特に気を引かれたのが最後につけられた一文。「彼もまた峰不二子に惚れていますが、そんなことは誰にも見せません」。
オフィシャル設定で「次元は不二子が好き」という話を聞いたことはあるが、実際に見たのは初めてだったので、少々意外な思いがした。へぇ、やっぱり次元は不二子が好きという設定なんだ…
というわけで、今回は次元と不二子の関係について、個人的な見解を語りたいと思う。

次元と不二子といえば犬猿の仲、顔をつき合わせるとケンカばかりしているイメージが強い。ルパンをはさんでライバル(?)関係にある風情の二人だが、次元が不二子に突っかかるのは愛情の裏返し、という見方がある。ロマンチストで義理堅い次元のことだから、親友のルパンと恋仲である不二子に心を寄せながらも、決してそれを見せない、という報われない片恋なんてことをやっていそうではある。自称ハードボイルドな男には、「第三の男」の哀愁がよく似合う。
さらに、実は不二子も次元のことが好きだったり、というたくましい空想力から生まれたのがジゲフジというカップリングだろう。特に新ルバージョン不二子と次元は、絵的にも悪くない組み合わせだ。困ったことに、K自身も次元と不二子が仲良くしているのを見ると、意味もなく嬉しい気分になってしまう人種である。ルパンと不二子は最高のカップルだと思うし、不二子が好きなのはルパンだと十分承知しているのだが、次元に優しい不二子、なんて珍しいシーンに無駄に胸がトキめいてしまうのである。

個人的な趣向や妄想はさておき、実際のところ、彼らの互いへの感情はどうなのだろうか。
Kの見るところ、少なくとも不二子は次元を恋愛対象としては全く考えていないようだ。一方、次元にしてもそういう感情はなさそうだが、ルパンという共通点がなければ相容れない存在である分、彼の中でどの分類に置けばいいのか微妙なのだろうなという気がしている。妹(家族)扱いするにはいい女過ぎるし、仲間扱いするには食えない女過ぎるといったところだろうか。

元来、次元はそれほど複雑な性格はしていないし、駆け引きを得意とするタイプでもない。恋愛に関しては世にある多くの男たち同様、愛すべき単純さで惚れたり別れたりしている傾向がある。例えば、友達が女に騙されていると第三者的な視点ではちゃんと理解できるのに、その女が自分を頼ってきたりすると、それは本気かもしれないと信じずにはいられないような単純さを持っている。相当疑い深くてひねくれてしまってはいるが、根っこの部分で人に対する信頼を捨て切れないロマンチスト、それが次元大介という男だろう。
思うに、次元は不二子に恋愛感情を持っていない。ただ恋愛に発展する可能性のある関係ではあるだろう。
ルパンが散々騙されている姿を見ている次元は、不二子の本性を嫌というほど知っていて、全くもって「あんな女のどこがいい」と苦々しく思っているに違いない。しかし、そんな不二子が不意に横顔に憂いを秘めたり、彼にだけふっと弱さを見せたりなんかすると、わりとコロッと惚れちゃうんだろうな、という気がする。「もしかして」「今回だけは」とわずかな可能性に賭けて、「信じ」ようとする性質を持つ次元は、たとえ不二子相手でも、そこに真実を求めようとするのではなかろうか。
で、不二子ほどの恋愛の達人、そういう男の「守ってやりたい」的な庇護本能をどう刺激して惚れさせるかなんて、知り尽くしているに違いない。次元を自分に本気で惚れさせるなんて、実は不二子には簡単なことなのではないかと思う。
不二子がそれをしない理由はただ一つ。次元がルパンの相棒だからだ。

ルパンというのがまた不思議な男で、自分は女に裏切られても平気だし、それを「女のアクセサリー」と流してしまえるほどに懐が深いが、その裏切りに本気で傷つく人間の痛みを理解できるらしい。決して裏切らないという自身の美学をどこか恋愛にも求めている次元を口ではからかいながら、ルパンはそういう純粋さを大切にしている気がする。次元の恋愛エピソードではいつもルパンが無口になり、次元の背中を黙って見つめている姿が印象的だ。
不二子が自分を裏切ることには寛大なルパンだが、次元を本気にさせて裏切ることは許さないのではないかなぁ…と思っている。(少々理想が入っているかもしれない/笑) ただ、その前に次元はルパンの元を去るだろうし、わりとさばさばした性格の不二子が、三角関係なんてややこしい関係を好むとは思えない。
つまり、次元に惚れさせることは、不二子にとって大きな益にはならないのである。

不二子が頭がいいなと思うのは、まさにそこなのだ。
次元の扱いを誤れば、ルパンとの恋愛ゲームを続けることは出来ないと不二子は知っているはずだ。次元に対して「女」を武器に使うことは得策ではない。だから彼女は次元と本気でケンカをするし、色仕掛けをすることもない。その気になれば次元を落とす手腕くらいはきっと持っているはずなのに、そのテクニックを駆使したりしない。それは意識的な計算かもしれないし、あるいは無意識的に――不二子は不二子なりに、次元のことが好きだからなのだろうな、と思ったりする。
不二子は認めないかもしれないが、女を演じなくてもいい相手には、それなりの居心地のよさがあるだろう。ケンカ友達のような関係をそれなりに気に入っているのかもしれないし、あるいはまた、女として媚を売ることは不二子なりのプライドが許さない相手でもあるのかもしれない。いずれにしても、不二子は本気で次元に恋愛ゲームをしかけたりはしないのである。(また、実際に次元が惚れるかどうかも微妙な問題だとは思うが…)

しかし、「旧ル」あたりの二人の関係は、また少し異なる見方も出来そうだ。(Kはどうもベースが「新ル」らしい)
「旧ル」不二子などは恋愛にはもう少し真面目なので、そこまでの余裕はなさそうだし、少々お調子者の次元も不二子との関係が希薄である。逆に「パースリ」あたりだともっと感情の置き場所が落ち付いている印象も見うけられる。(パースリはまだあまり詳しくないですが)
単純にルパンを挟んでいるだけの関係にしてはもったいないくらい、捏造のしがいのある二人である。次元とルパンの関係が一歩間違うと微妙になる(かもしれない?)ように、次元と不二子の関係もまた、なかなか緊張感のあるバランス関係であるのが面白いのではないかな、と無責任なKは思っていたりするのでありました。

<了>


蛇足というか、まったく別の話題。件のCDの歌詞カードの、次元大介の項目について、あんまり面白かったので一応書き留めておく。
『ルパンの相棒。その枠を踏み越えることもなく、またその点で不足もありません。もしかするとルパンより天才かも。ルパンの危機に臨んで救いの行動を起こしますが、けっしてルパンに干渉しません。協力は惜しみませんが報酬を要求しません。黙々としてガン・プレイにいそしんでいます(後略)』
……そうか? 次元の行動がとっくに相棒の枠を踏み越えていると思うのはKだけか? ルパンが不二子といちゃいちゃしようとするのを余計なお世話で干渉をしつづけている・と思うのはKだけなのかっ!? しかも「協力を惜しまず」「報酬を要求しない」って……めっちゃ都合のいい男に仕立て上げられてるぞ…それでいいのか次元大介(涙)。
ついでにルパンの項もなかなか面白かった。一部抜粋。
『(前略)長い足をもてあまして歩く姿はガニマタに近い。つまりカッコよく見えて、ハレンチなスタイルの持ち主。カルダンにオーダーした自慢のスーツを着ながらも、事件と場所、天候と気分次第でフーテンからピーコックにまでなるTPOの元祖。(後略)』
ルパンがガニマタなのは足が長すぎるゆえんらしい(笑)。しかしそれゆえハレンチって日本語としておかしすぎる設定だ… そしてルパンのスーツはカルダンのオーダーメイドなんですか。
…まぁこんな調子だったので、Kの中でこの設定は採用しなくてもいいということになってしまいました(笑)  (K)

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