勝手に比較 ―モンキー・パンチ氏と水木しげる氏― 


一体この御大たちの何を比較するのかと疑問に思われる方もいるかと思うが。
Kの住む某地方の、それほど遠くない所に、漫画家・水木しげる先生の出身地がある。知る人ぞ知る鳥○県境港市だ。
この市は「ゲゲゲの鬼太郎」で町おこしをしている。鬼太郎ロード、水木しげる記念館、某有名小説家などが名を連ねる世界妖怪会議の発祥地でもあるらしい。(余談だが、京極先生を拝見したいばかりに会議に参加したことのあるKである)

先日、久し振りにここを訪ねて散策していた。鬼太郎ロードとは、ひなびきった個人商店街にさまざまな妖怪の像が並び、妖怪マップを見つつ妖怪めぐりをしたり、スタンプラリーをしたり、買い物をしたりできる。一流ではないにせよ、それなりに楽しめる観光ゾーンと言えなくもない。週末にはネズミ男やねこ娘のかぶりモノを着た怪しげな団体も登場するらしい。
個人商店の趣を残しつつ、観光グッズをおいてある店に入ると、なかなか洒落たデザインのキャラクターグッズが並ぶ。一反木綿、ぬりかべetc. ふりかけばばぁとふりかけじじぃのフリカケ2点セットなんてのもあるし、地元の酒蔵でも鬼太郎キャラを利用したラベルやボトルなどで、酒を販売している。水木しげる記念館というのも、2003年にオープンしたものだ。
Kは鬼太郎に特別な思い入れがあるわけではないので、見て楽しんで歩くだけだが、もしこれが「ルパン三世」だったら、嬉々として買い物に励むだろうと思った。ルパンのキャラクターグッズはたくさん出ているし、フィギュアのお店でルパンフィギュアを眺めるのは楽しみの一つだが、グッズがこれだけ揃ったところは見たことがない。トーキョーにルパンストリートでもあったら、喜んで出かけるだろう。ルパン記念館でもあったら、それはルパンファンにとって一度は行きたい聖地のようなものに違いない。

実はKは、モンキー・パンチ氏の故郷、北海道は厚岸郡浜中町の住民だったことがある。数年間そこで暮らし、霧多布がルパン三世の原作者の出身地だということも知っていた。が、その地にルパンを連想させるようなものは何もなかった。
霧多布に「ルパン資料館」でも作らないのかという素朴な疑問には多少の噂を聞いた。原作者や町議会の方ではそういう希望もあるようだが、アニメの権利を握っているテレビ局の方で渋っている、というような話だった。あくまで地元の噂だが、要するに話はあってもなかなか障害が多いということらしい。そりゃまぁ、あの北海道の片田舎、大自然を求めてやってくる観光客はいても、ルパンを求めて来る人は少なかろう。道産子には観光に力を入れる気質はあまりないし、札幌や小樽ならともかく、道東でそういう資料館はあまりなかったと思う。観光資源としては、あまりに毛色が違いすぎるだろう。
ルパン記念館なら、やはり膨大なアニメセル画とか、グッズとか、喋る人形とかあって、大掛かりなシアターみたいなのもあったりすると楽しめるだろうなと思ったりする。外観は奇抜なセンスの建築物で(笑)。そういうものは東京なり地方都市なり、街中にある方が似合っているだろう。例えば、モンキー・パンチ氏と同じ北海道出身(だったと思うが)の漫画家・いがらしゆみこ氏の「いがらしゆみこ記念館」はなぜか岡山県倉敷市にあったりする。
かの地に建てられるのなら、モンキー・パンチ記念館であり、原作ルパン中心の生原稿だとか設定集だとか、視覚的には白黒な感じになるのではなかろうか。ネット界を見ると原作ファンは多そうだし、それはそれでマニアな人が地味に訪れてきて、霧多布らしい地味さが保たれそうな気がする。Kも友人に会いがてら出かけることだろう。

鬼太郎とルパンの共通点だの、相違点だのを比較する気はさらさらないが、ただ、原作とは少しイメージが違っていたアニメ、という点で、少し重ね合わせてみただけだ。原作もアニメもまとめて故郷に自分の記念館を建てられた水木しげる氏は、なかなか幸運だったのかもしれない。K的に似たような分類では、たとえば「サザエさん」の長谷川町子氏などが挙げられるが、サザエさんの記念館は何処にあるのだろう。きっと、どこかの県にあるに違いないのだが……。

<了>

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